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日本式ローマ字翻字の推薦
(2008-09-28 版)

辻野 匠 (Taqumi TuZino)

2007-12-29 起筆.PDFが正本.HTMLは表現できない部分があり,画像 等で辛くも表現してゐる.


目次

はじめに

現在の日本人は新たなローマ字問題に直面してゐる.その問題とはASCIIだけで 日本語の固有名詞を正しく表記することである.日本語をローマ字で表記する機 会は増えた.しかし,無視される正則と省庁縦割の通則と自己流の表記とでロー マ字表記は混乱する一方である.単純に音を表現できればよいといふna\textrm{\uml {i\/}}\kern.15emveな 方針では解決しない.私は,この問題への解決として日本式ローマ字による翻字 を推薦する.

最初にローマ字についての歴史を簡単に触れておく.ローマ字は最初,日本に持 ち込まれた時は持ち込んだ外国人が日本語を表記するためのものであった(安土 桃山時代や明治時代).それから,日本人が日本語を表記しようといふ運動があっ た(ローマ字化運動.主に明治から終戦まで).この時の代表的なローマ字方式に ヘボン式と日本式の二系統あった.ヘボン式は米国人C.ヘボン氏(James C.Hepburn)が日本にキリスト教を布教する際に日本語を英字で表記するために開 発したもので,子音を英語風に母音を伊語風に表記する.現在広く見られるロー マ字綴はいづれもヘボン式系統の亜流であるが,道路標識,外務省パスポート, 駅名それぞれ独自の表記をしてゐる.一方の日本式は日本人が自然発生的に使っ てゐたものを田中舘愛橘氏(あるいは田中館.以下,公人と見倣して敬称略)がま とめたもので,ある音がどの音韻(ある言語が同音とみなす音の集合)に属するか によって決定する.具体的には音図(日本語では50音図といひ,音を分析して表 にしたもの)に従ひ,行と段にわけて同じ行/段は同じ文字を割当てる.理論的明 晰さから寺田寅彦,朝永振一郎など物理学者やトルベツコイ,イェスペリセンの やうに言語学者に支持された.ヘボン式と日本式は議論を重ね,1937年には日本 式をベースに四假名を整理した訓令式が内閣から告示された.終戦後の1954年, ヘボン式(及び選に洩れた四假名を含む日本式)を許容する綴りをサブとして容認 する訓令式が再度告示された.その後,1937年制訓令式はISO3602として国際規 格になる.

ローマ字運動の提唱者たちはローマ字のはうが効率的であり,日本の文明化には ローマ字化が貢献すると考へてゐたらしい.現在,この運動はワープロなどの技 術革新によって下火となった.今日の問題も,日本語を文章としてローマ字表記 するといふことではない.問題になってゐるのは基本的には固有名詞(人名・地 名)の表記である.

もっとも大きく問題になるのは長音表記である.現在の地名や人名表記では長音 符省略されてゐる(ただし,駅名では長音符が表記される).この表記法では浩三 と小僧と去年(こぞ)を区別できない(三者ともkozo).明治時代にローマ字が輸入 された時のオリジナルのヘボン式ではk\textrm{\={o\/}}z\textrm{\={o\/}}/koz\textrm{\={o\/}}/kozoのやうに書きわけら れてゐた.その後,田中舘愛橘の日本式でもk\textrm{\^{o\/}}z\textrm{\^{o\/}}/koz\textrm{\^{o\/}}/kozoと書きわけら れてゐた.「 ̄」(マクロン)や「^」(シルコムフレックス)を長音符と呼ぶ. この長音符は英語表記(たとへば英字新聞)では省略されてゐる.理由は明確では ないが,俗説では英米人が長音を理解できないからといはれてゐる.現在では日 本人が固有名詞をローマ字表記する時でさへ長音符を省略してゐる.それは英米 人が長音符を省略してゐるのに倣ってゐるのかもしれないが,自分から省略する 必要はないと私は考へる.

長音符省略にはもうひとつ,運用上の理由がある.英語の出版界では長音符の印 字が困難だといふ理由である.ASCIIつまり英語で使ふラテン文字と数字であれ ば印刷が簡単である.ここではこれを「ASCIIの呪い(ひ)」といふことにする. たとへば,パソコンでファイル名をローマ字で書きたい時に長音符は表現できな い.

このやうに計算機(パソコンを含む)ではASCIIしか通さない事態がある(大型計算 機ではEBCDICとふ規格もあるが英字しか使へないことではASCIIと同じである). 身近な例でも,パソコンがトラブルを起して日本語処理機能が壊れた時には日本 語メッセージが全て意味不明な記号に文字化けする.パソコンが健康な時であっ ても,違ふシステムで作成されたファイル名の日本語が文字化けすることがある. さういふ時には英数字だけが読める文字である(それがASCII).同様にドイツ語 のH\textrm{\uml {u\/}}tteのやうな\textrm{\uml {u\/}}(uウムライト)かフランス語のC\textrm{\^{o\/}}teのやうな\textrm{\^{o\/}}(オ シル コムフレクス)はアルファベットには違ひないが,英字ではない(正確には, ASCIIではない)ので化けてしまふ.日本のパスポートの名前にしてもさうだ.ロー マ字の正統な表記では「大野」は\textrm{\^{O\/}}noまたは\textrm{\={O\/}}noであるが,\textrm{\^{O\/}}\textrm{\={O\/}}もASCII でないのでOnoになってしまふ.上述のkozo=浩三/小僧もさうだし,kosaku=耕作 /小作,odori=大通り/踊り,Sogo=そごう/齟齬,と枚挙に暇がない.

ここで問題になってゐるのは長音符を使はずにローマ字する方法である.幸ひに それは可能である.スリランカ語やベトナム語のやうに字音符(上の\textrm{\uml {u\/}}\textrm{\^{o\/}}, \textrm{\'{e\/}}, \textrm{\c{c\/}}などアルファベットに付加されるもので長音符や変音符を意味する. 概念としては日本語の濁点に近い)が非常に大量にあるものではASCIIでは満足な 表記はできない.そのやうな言語ではどうやっても省略して表記するしか方法は ない.しかし,日本語の音韻構造は単純でローマ字26文字といふ限りある資源で 表記することが十分可能である.これまでも「浩三」を表音的にKoozooのやうに 長音符を使はずにASCIIだけで表記する方法が考案されてきた.しかし,この方 法は人気がない.これは同母音連続を嫌ったためと考へられる.更に,英語では ooは/u/のやうに発音されることを嫌ったためもあるだらう(とはいふものの,佐 藤をSatoと表記すると英語では[seito]「セイト」となってしまふがこれを嫌ふ ことはほどんとない.英語でサトウとふ発音を実現するためにはSuttoとでも すべきだが,さうする人はほとんどゐない.このやうに英語で変な呼みになる ことを嫌ふといふ指向には一貫性がない).世界的にはooのやうに同母音連続は 奇妙ではなく,ヨーロッパの言語に限ってもオランダ語(boot/ボート/船.英語 のboat)やフィンランド語(koota/コータ/集める)に認められる.

これまでのローマ字法で提唱されてきた方法はいづれにしても表音主義といふ範 疇にあり,音を表現するローマ字であった.しかし,一方で翻字法といふ方法も ある.キリル文字のPはラテン文字ではRだからR,同じくBはVだからVと文字を文 字で置き換へる方法である.この方法では,たとへば語末のBは発音としてはVで はなくWの発音になるとしてもVで表記するのである.これにより表音性からは若 干逸脱するが文字体系の構造は保存されることから科学的な表記法といはれる (Kadmon, 2000). 日本語では假名を逐次,ローマ字になほすのを翻字といふ.たとへば浩三「こう ぞう」をKouzouと表記するのがそれだ.

今,筆者が推薦する基本的な方針は翻字方式である.翻字式なので長音といふ概 念はない.ローマ字は第一目的として音を表現するためのものではなくて假名を 表現するためのものであると規定する.音を表現することは第一目的ではないだ けで音を表現してはいけないといふ意味ではない.

なぜ翻字か?私達にとって重要なのは単なる発音ではなくて,假名としてどう表 記するかである.私達は新カナでさへ,逢坂と大阪を「おうさか」と「おおさか」 と書きわける.更に,自分たちの子供のことを鑑みた場合,ローマ字標識は仮名 を翻字してゐるはうが望ましい(鏡味,1997).道路標識や駅名は外国人のものだ からと表音指向で作られてゐる(表音的ですらない場合もある.たとへば「三条」 は表音的にはSanj\textrm{\={o\/}}であるが,道路標識のSanjoのやうに長音符を省略したもの は表音的とさへ云ひがたい.また翻字にしても外国人には影響はない=後述).し かし,標識や駅名は子供が文字--特に漢字--を覚えるのに絶好の機会を提供し てゐるのである.子供はしばしば電車や車の中から看板や標識をさがして,漢字 を覚える.表音的なローマ字綴でも子供が読み方を知るのに役に立つが,日本語 では読み方を表現するのは読み仮名である.「大阪」「逢坂」のやうに同じオー の音であっても読み仮名が異なる場合がある.そのやうな違ひは日本語の歴史性 に由来する.もし日本の文化を破壊したい場合は破棄しても構はないだらうが, 文化を伝承しようとした場合は歴史性の継承が原則となる.その際には表音的表 記よりも假名を翻字する表記のはうが都合がよい.

現在のローマ字表は四假名といはれる「ジヂ」「ズヅ」をそれぞれ同音と見なし て書きわけないし,「ゐ」「ゑ」についても表現する方法がない.これは日本の 古典の固有名詞をローマ字表記できないことを意味してゐる.明治時代に田中舘 愛橘が提唱した日本式ではそれらを書きわけることができた.私が推奨するのは, まさにこの方法である.正確にはISO3602の厳密翻字といふ1

私自身は復古假名遣(いはゆる旧カナ・歴史的假名遣.どちらの名称も曖昧であ るため復古假名遣と称す.個人的には「とこしへの假名遣」を僭称する)を歴史 性と合理性から日本語の正統な表記として支持してゐるし,本ローマ字の説明に おいても四假名や「ゐゑ」など復古假名遣についての記述に重きを置いてゐるが, 本・日本式ローマ字方式は現代仮名ずかい(当用仮名ずかい(笑))や江戸時代の 間違った假名遣(たとへば「うれしひ」)にも対応してゐる.假名遣からは独立 してゐる.対応できないのは変体假名2と上代特殊假名遣である.

なほ,外国人のための地名人名の表記は労多くして実り少ない.ローマ字で書き さへすれば世界中の人が自分の名前を正確に発音してくれるだらうといふのは無 知ゆゑの錯覚である.ラテン文字を使用する言語の話者は与へられたローマ字綴 を自分たちのローマ字読みで読むのが自然である(たとへば,伊達/Dateは英語話 者なら[deit]デイトと読むだらうし,町田/Machidaだって[mac haida]マックハ エダ,日立/Hitachiだって[hai tac hai]ハイタックハイかもしれない.スペイ ン語話者なら城島Jojimaは[xo\textrm{\v{x\/}}\kern.05emima]ホヒーマになるだらう.かはいさうなの は純/Junで,[xun/x\textrm{\ {u\/}}]つまり,フンになってしまふ.ちなみにドイツ語で読む とユンになる).どのやうなローマ字方式であらうと通りすがりの旅行者に覚え てもらふのは難しい.強いて望むなら,素直なローマ字方式である.英語に近い からとかといふ理由でヘボン式を推薦することは私にはできない.なぜか,端的 にいへば英語を基準にする理由がないためである.英語には英語の歴史があり, それは尊重すべきものである.そして英語の歴史上の変化を尊重するなら,それ によって生じた特殊な綴字の読み方を無批判に導入することは 英語特有の個人 的事情を別の文化の標準にしてしまふ間違ひがある.それに英語は歴史性ゆゑ, 表記と音が複雑になってをり,基準にするにはふさはしくない.さらにヘボン式 では子音の表記は英語式(風?)であるが,母音の表記は伊語式である.このやう に捩れた表記ではなく,素直な表記が望ましい.

また,翻字式にしても外国人には影響がない.外国人は素直にローマ字を規則に したがって読みさへすればよい.コ・ウ・ゾ・ウと活舌よく発音すれば「浩三」 のことだと理解してもらへる(もっとも活舌よく話すことが英語話者にはむつか しい.活舌では,まだ仏語や独語話者のはうがましだ).たとへMatidaマ・ティ・ ダと発音しても,「マチダ」のことだとわかる(ただし,アメリカ英語のやうに マリダと発音されるとわからない).復古假名遣翻字にすれば,むしろ認知性が 高まるだらう.それは日本人の側が音と字といふものを幅をもって理解できるや うになるためである.復古假名遣翻字であれば三条を「さんでう」と書いてサン ジョーと読むため,表音主義であればdeuを綴ればデウとしか読めない狭い発想 のところをジョーといふ音もあると認知の幅が広がる.それは英語のやうに綴り と発音の関係を悪戯に混乱させるものではなくて,むしろフランス語に近い.フ ランス語では綴り方と発音が不規則に見えるが,フランス語を知るものにとって は一意に発音が決定される.本方式も日本語を知り復古假名遣を多少知ってゐる ものならば正確な現代音を曖昧さなく再現できる.

本稿で扱ふ記号

本稿で扱ふ記号にはIPA(International Phonetic Alphabet: 国際音声記号)など 印刷や計算機で取り扱ふのに特別なソフトウェアを必要になる.そこで,ここで は巻末に示す代書法で表記することにする.

なほ,IPAでは[j]はジャではなくヤ行の頭子音である.また,[u]は円唇後舌狭 母音で英語仏語のuである.標準的な日本語のウはこれとは若干異なり平唇の後 舌狭母音であるが,完全に平唇でもなく平唇と円唇の間の広い範囲を指す.関西 では特に円唇が強い.ここでは円唇も平唇も区別せず,uで示す.ツやチのやう な破擦音はIPAでは合字で示すか,tie-barで二文字を連結しなければいけない ( $ \widehat{ts}$).代書法ではtie-barで連結したが,しばしば省略されること が多い.有声両唇摩擦音[$ \beta$]は日本語では独立の音韻をなさず,語中のバ 行の異音である.

ローマ字表

$ \surd$ 直音(開口呼)
行\段             ア/a/      イ/i/      ウ/u/      エ/e/       オ/o/     
ア行/'/ あ a い i う u え e お o
カ行/k/ か ka き ki く ku け ke こ ko
サ行/s/ さ sa し si す su せ se そ so
タ行/t/ た ta ち ti つ tu て te と to
ナ行/n/ な na に ni ぬ nu ね ne の no
ハ行/h/ は ha ひ hi ふ hu へ he ほ ho
マ行/m/ ま ma み mi む mu め me もmo
ヤ行/y/ や ya -- ゆ yu (イェ)ye よ yo
ラ行/r/ ら ra り ri る ru れ re ろ ro
ワ行/w/ わ wa ゐ wi -- ゑwe をwo
ガ行/g/ が ga ぎ gi ぐ gu げ ge ご go
ザ行/z/ ざ za じ zi ず zu ぜ ze ぞ zo
ダ行/d/ だ da ぢ di づ du で de ど do
バ行/b/ ば ba び bi ぶ bu べ be ぼ bo
パ行/p/ ぱ pa ぴ pi ぷ pu ぺ pe ぽ po

$ \surd$ 開拗音(斉口呼,硬口蓋化音)

行\段           ア/a/    イ/i/    ウ/u/    エ/e/    オ/o/    
カ行/k/[ $ \mathrm{k^j}$] きゃ kya -- きゅ kyu きぇ kye きょ kyo
サ行/s/[ $ \mathrm{s^c}$] しゃ sya -- しゅ syu しぇ sye しょ syo
タ行/t/[ $ \mathrm{\widehat{ts^c}}$] ちゃ tya -- ちゅ tyu ちぇ tye ちょ tyo
ナ行/n/[\textrm{\ {n\/}}\kern.05em] にゃ nya -- にゅ nyu にぇ nye にょ nyo
ハ行/h/[\textrm{\v{x\/}}\kern.05em] ひゃ hya -- ひゅ hyu ひぇ hye ひょ hyo
マ行/m/[ $ \mathrm{m^j}$] みゃ mya -- みゅ myu みぇ mye みょmyo
ラ行/r/[ $ r^{\mathrm{j}}$] りゃ rya -- りゅ ryu りぇ rye りょ ryo
ガ行/g/[ $ \mathrm{g^j}$] ぎゃ gya -- ぎゅ gyu ぎぇ gye ぎょ gyo
ザ行/z/[ $ \mathrm{\widehat{dz^c}}$/ $ \mathrm{z^c}$] じゃ zya -- じゅ zyu じぇ zye じょ zyo
ダ行/d/[ $ \mathrm{\widehat{dz^c}}$/ $ \mathrm{z^c}$] ぢゃ dya -- ぢゅ dyu ぢぇ dye ぢょ dyo
バ行/b/[ $ \mathrm{b^j}$] びゃ bya -- びゅ byu びぇ bye びょ byo
パ行/p/[ $ \mathrm{p^j}$] ぴゃ pya -- ぴゅ pyu ぴぇ pye ぴょpyo

$ \surd$ 合拗音(合口呼,円唇化音)†

行\段           ア/a/    イ/i/    ウ/u/    エ/e/    オ/o/    
カ行/k/[ $ \mathrm{k^w}$] くゎ kwa kwi -- kwe くぉ kwo
サ行/s/ [ $ \mathrm{s^w}$] すゎ swa swi -- swe すぉ swo
タ行/t/[ $ \mathrm{\widehat{ts}}$] つゎ twa twi -- twe つぉ two
ナ行/n/[ $ \mathrm{n^w}$] ぬゎ nwa nwi -- nwe ぬぉ nwo
ハ行/h/[ $ \mathrm{h^w}/\Phi$] ふゎ hwa hwi -- hwe ふぉ hwo
マ行/m/[ $ \mathrm{m^w}$] むゎ mwa mwi -- mwe むぉ mwo
ラ行/r/[ $ r^{\mathrm{w}}$] るゎ rwa rwi -- rwe るぉ rwo
ガ行/g/[ $ \mathrm{g^w}$] ぐゎ gwa gwi -- gwe ぐぉ gwo
ザ行/z/ [ $ \mathrm{z^w}$] ずゎ zwa zwi -- zwe ずぉ zwo
ダ行/d/[ $ \mathrm{\widehat{d{z^c}}}$] づゎ dwa dwi -- dwe づぉ dwo
バ行/b/[ $ \mathrm{b^w}$] ぶゎ bwa bwi -- bwe ぶぉ bwo
パ行/p/[ $ \mathrm{p^w}$] ぷゎ pwa pwi -- pwe ぷぉ pwo

$ \surd$ 特殊音 †

行\段            ア/a/    イ/i/    ウ/u/    エ/e/    オ/ o/   
サ行/s/[s] -- スィ s"i -- -- --
タ行/t/[t] -- ティ t"i トゥ t"u -- --
ナ行/n/[n] -- ヌィ n"i -- -- --
ハ行/h/[h] -- ヘィ h"i ホゥ h"o -- --
ザ行/z/[z] -- ズィ z"i -- -- --
ダ行/d/[d] -- ディ d"i ドゥ d"u -- --
$ *$バ行/b/[b/ $ \mathrm{\beta}$/v] ヴァ va ヴィ vi ヴ vu ヴェ ve ヴォ vo
$ *$ブァ行/ $ \mathrm{\beta}$/[ $ \mathrm{\beta}$] ブァ va ブィ vi ブ vu ブェ ve ブォ vo
ウヮ行/w/[w] ウヮwwa wwi - wwe ウォwwo

$ \surd$ 特殊音の拗音†

行\段           ア/a/    イ/i/    ウ/u/    エ/e/    オ/o/    
タ行/t/[ $ \mathrm{t^j}$] テャ t"ya -- テュ t"yu テェ t"ye テョ t"yo
タ行/t/[ $ \mathrm{t^w}$] トヮ t"wa t"wi -- t"we t"wo
ナ行/n/[ $ \mathrm{n^j}$] ネャ n"ya -- ネュ n"yu ネェ n"ye ネョ n"yo
ナ行/n/[ $ \mathrm{n^w}$] ヌヮ n"wa n"wi -- n"we n"wo
ハ行/h/[ $ \mathrm{h^j}$] ヘャ h"ya -- ヘュ h"yu ヘェ h"ye ヘョ h"yo
ハ行/h/[ $ \mathrm{h^w}$] ホヮ h"wa h"wi -- h"we h"wo
ダ行/d/[ $ \mathrm{d^j}$] デャ d"ya -- デュ d"yu デェ d"ye デョ d"yo
ダ行/d/[ $ \mathrm{d^w}$] ドヮ d"wa d"wi -- d"we d"wo

$ \surd$ 撥音・促音等

撥音「ん」音素/N/は常にnで示す.「ん」の後に母音,半母音が 来る時は,「'」で区切る(例.健一 ken'iti.翻訳 hon'yaku).促音は子音を重 ねて示す(例.いった.itta).† どうしても表音的にしたい場合は,[...]や`...' で括る.†外来語をそのまま書く場合は,`...'や斜体にする.「あっ」「えっ」 のやうな語末が促音になるものは,att, ettとtの重子音で表す.これは鏡味 (1997)の提案を採用したものである.

音韻表記・発音表記は現代の標準的な音韻・発音を示した.「$ *$」は実際の音韻 としては存在しない仮想的な表記である.「†」は本来の日本式では定義され てゐない,本稿独自の拡張である.

直音

「--」は理論的に存在しえない字/音である.

yeは現代仮名使いはもちろんのこと復古假名遣においても存在しない字である. yeは假名が成立する前にア行の「え」に同化した.もしこれを強ひて字を當てれ ば「いぇ」となる.萬葉假名では,「江」「曳」「要」「延」「兄」「枝」が當 てられてゐる.平仮名の「え」は「衣」の草書に由来し音韻論的にはア段のeで ある.一方,片仮名の「エ」は「江」の傍に由来しヤ行のyeである.この表記が 成立した時,既にeとyeが混乱してゐたことがわかる.これを書きわける際は, 平仮名のyeは「イ」と「エ」の合字や「江」で代用する方法が提案されてゐる. 片仮名のeは,衣の冠だけ抜粋して「亠」とする方法が考へられる.学術的研究 は別として正書法としての復古假名遣ではeとyeを区別しないので,これらの表 記は古文の翻字など純粋に学術的なものに限られる.ローマ字が理論的にyeの存 在を保証してゐるため転記表を用意した.

異化した音

標準とされる発音のうち,行を規定する音声学的音から異化したものは下記のと ほり;「し」/si/は[ $ \mathrm{s^c}$],「ち」/ti/は[ $ \mathrm{\widehat{ts^c}i}$], 「つ」/tu/は[ $ \mathrm{\widehat{ts}u}$],「ひ」/hi/は[\textrm{\c{c\/}}i],「ふ」/hu/ は[$ \Phi$u],「に」/ni/は[\textrm{\ {n\/}}\kern.05em]をそれぞれ子音として持ってゐる.

現在の日本語で標準とされる発音では 「し」/si/は[ $ \mathrm{s^c}$]を子音と して持つとされるが巷間においては[s]を子音にすることも多い(敢てカナ書きす れば「スィ」と同じ音). しかも,サ行それ自体が人によっては[s]一本であっ たり,[$ \theta$]であったりする.たとへば,私はサ行を[$ \theta$]として発音 してゐる(らしい.音声を診断する機械により知った.サ行が[$ \theta$]の人が 多くなってゐると大野 晋が指摘してゐる).[s]は意識しないと無理で, [\textrm{\c{s\/}}]は頑張って可能.[\textrm{\v{s\/}}\kern.05em](esh,sheetのsh)は(機械の診断によれば)今の ところ発音できない.また,「せ」/se/については[ $ \mathrm{s^c}$]を子音をす る方言もある(古語の発音が保存されてゐる).このやうに揺らいだ表記を統一的 に表現するのはsiである.

ガ行,ザ行,ダ行

現在の日本語の標準とされる発音では,ガ行子音はガ行鼻濁音[\textrm{\ {g\/}}]を異音とし て持つ.標準とされる発音では鼻濁音は語中にのみ表はれる.ザ行子音は破擦音 ([ $ \widehat{dz}$]など)のはうが主流で摩擦音([z]など)を異音として持つ.更 に,`標準発音'では,「じ」と「ぢ」は[ $ \mathrm{\widehat{ds^c}}$]または [ $ \mathrm{z^c}$]の子音を持ち,「ず」「づ」は[ $ \widehat{dz}$]または[z]の 子音を持つ.

「ヂ」をdi, 「ヅ」をduとふ表記は特に英語(だけ)に親しい人には違和感があ る.歴史的にヘボン式支持者はこの綴りに憎悪に近いものを表明してきた.しか し,表記に違和感があるからといって,これをdjiとかdzuとすると日本語の音韻 体系の表記そのものに破綻を来す(なほ,私にはヂをdi, ヅをduとしても違和感 はない/音韻・表意・歴史の観点から/し,dji,dzuとしても違和感はない/単なる 音声表記として/).「三条」は復古假名遣では「サンデウ」となり,それを日本 式ローマ字で翻字するとSandeuとなる.発音としてはエウは現代語ではヨー [jo:]のやうに音韻変化した(丁度,ラテン語でEuropaエウロパが英語ではeurope ユアラープになったやうに)ので,sandeuは[sandjo:]となった.後に[djo:]が硬 口蓋化により[ $ \mathrm{d^j}$o:], [ $ \mathrm{\widehat{dz^c}}$o:]となった. これは一連の歴史である.もし,ヂを英語の音価にあふからいって ji[ $ \mathrm{\widehat{d\check{z}}}$i]で書く例外を導入すれば,diはディ, dyoはデョを表はすことになるだらう.しかし,deuはどうなる?歴史的経緯によ ればdeuはdy\textrm{\={o\/}}[ $ \mathrm{d^j}$o:]を経て[ $ \mathrm{\widehat{ds^c}}$o:]になっ た.この過程におけるdy\textrm{\={o\/}}は現代語の音韻ではヂョーであるのに,表記ではデョー を表はすことになってしまふ.例外を導入することにより表記全体の混乱が生じ る.これは言語が内部に自律的構造をもってゐるためである.つまり,「ヂ」 「ヅ」はなにも今の音を示してゐるだけの存在ではない.歴史をもってゐる.そ れは単に書物に書かれた歴史だけでなくて私達の言葉に歴史は埋め込まれてゐる. なほ,私は復古假名遣を支持する個人的理由のひとつは,復古假名遣は言葉が歴 史的存在であり,自分もその一部であることを想起さしめるためである.また, 英語ですらdiは一概に[di]といふわけではない.たとへばcordialは [ko $ @^r\mathrm{\widehat{d\check{z}}}$@l]となる.

特殊音「スィ」「ティ」「トゥ」

ヘボン式支持者が日本式系統を批判する際にしばしば「スィ」「ティ」「トゥ」 の表記を例に出される.ヘボン式ではそれぞれsi,ti,tuと表現できるが,日本式 系統では,それらは「シ」「チ」「ツ」を意味する.ここでは母音の影響を受け ない子音の音を「"」を用ゐることを提唱する.これはキリル文字のラテン文字翻 字の硬音(非硬口蓋化音)を翻字する際の記号をそのまま援用した.計算機 の処理(プログラム)上「"」は適当な文字とはいひがたいが,実際はエスケープ しさへすれば処理上も支障ない.他にも「'」と使ふ方法が提唱されてゐるが, これは分節記号に使用されてをり,同じ記号に複数の意味をもたせることは混乱 を招くため,ここでは採用しない.

なほ,スィやトゥといふ仮名表記について追記する.一般にスィは[si]の音声を 指示してゐると考へられてをり,上でもそのやうに扱ったが,実はそれは勘違ひ である.「スィ」は現代仮名ずかいに従ってゐる限り,[ $ \mathrm{s^w}$i]と [si]のどちらも表し得る.復古假名遣であれば,[ $ \mathrm{s^w}$i]はス ,[si]はスィと書きわけられる.現在の日本語においては[si] と[ $ \mathrm{s^w}$i]は別の音韻と見倣されてゐない.[ $ \mathrm{s^w}$i]を厳密 に現代仮名遣いで表記したい場合,「スイ」(例.スイッチ)と表記されることも ある.その場合は[sui]との辨別が不可能になる.表記の上でも音韻の上でも 「スィ」は混乱の最中にある.また,スウォッチ(swatch)のやうな例もある.同 様にトゥも実際には指示対象となる音韻がはっきりしてゐない表記の一つである. [tu], [ $ \mathrm{t^w}$u], [tou]の3通りある.スィと同じく,[tu]と [ $ \mathrm{t^w}$u]は現代仮名ずかいで表記してゐる場合は辨別できないし,お そらく別の音韻とは考へられてゐないだらう.[tou]はトにウを軽く沿へる音で, トゥシューズなどに例が見られる.これはフランス語から仮名転記すればトウな るはづであるが,トウだと2音節になり原語の1音節から乖離するためなのか, 「トゥ」と表記されることが多い.この小文字の「ゥ」は「そぅね」などにも見 られる.このやうに特殊音は注意が必要である.

特殊音「ウィ」行

ウィ行は音韻としては原理的にはワ行と同じはずだが,ワ行がア段以外はア行に 収斂したのに対してウィ行はワ行の頭子音[w]を保持してをり,音価として違 ふものになってゐる.假名としてワ行は復古假名遣で用ゐられてをり,ウィ行は 外来語の表記に使ひわけられてゐる.ここでは假名を書きわけ,音価の違ひも表 現するといふ視点に立って,wwと重ね字(digraph)する.スィが[si]なのか [ $ \mathrm{s^w}$i]なのか,それとも[sui]なのか はっきりしなかったやうに, ウィもはっきりしない表記である.たとへば,ウィスキーはウイスキー [uisuk\textrm{\={\i\/}}\kern.15em]とかヰスキー[wisuk\textrm{\={\i\/}}\kern.15em]なのか人それぞれである. 明治大正期には ウヰスキーとさへ表記された.ウィを重ね字で表記したのは,これはワ行の合拗 音と解釈したためである.

特殊音「ヴ」行

外来語の表記(例:ヴァイオリン)等で「ヴ」行が設定されてゐるが,多くの日本 語話者は有声唇歯摩擦音[v]を発音できずに,有声両唇音の摩擦音[$ \beta$]か破 裂音[b]として発音してゐる.翻字のためには必要であるが音声学的な実体はと もなはない(参考$ *$ブァ行).英語風に気取って云ふ人の多くは[$ \beta$]である. 意識せずに云ふと多くは[b]になる.[$ \beta$]も[b]も中世から現代の日本語で は/b/の異音である.ガ行鼻濁音と同じく[$ \beta$]は語中にのみ表はれる.

特殊音の拗音・小書きのカナ

理論的には特殊音の拗音も成立する余地があるが,日本語として辨別され得ない ものも多く,假名書きも実際にはあやしい.

大きい假名に小さい假名を組合せる一種の反切法によって,日本語として有りえ ない假名表記も可能である.たとへば「ハェ(海?)」などは実際には該当する発 音が日本語ではないにも関はらず表記それ自身は可能だ.このやうな假名を翻字 することはできない(強ひて表記すればh).翻字は単音ごとまたは音節ごとが 原則で,「ハェ」で一音節であり,単音は「ハ」の前半で一つ,「ハ」の後半+ 「ェ」で一つであるから「ハ」と「ェ」と分けて翻字することはできない.この 表記に従へばカエサル(Csar)はカェサルとカナ書きしなければならず,強 ひてローマ字にするとKsaruとなる.レントゲン/R\textrm{\uml {o\/}}ntgenはロェントゲン となり,それを翻字すればr\oentogen).この方法は日本語表記の新しい可能 性を提示してゐるが,もともと日本語の音韻ではないので本ローマ字表記として は基本的には対象外とする.第一に,正則から外れた表記の欠陥をローマ字で解 消することは不可能である.第二に,わざわざ外来語の無理な表記を制定したと しても運用に問題がある(理解できない).第三に,伝へるべきは語(意)であって 音でも字でもないので,原則的には外来語は元の言語の綴を採用してイタリック または約物で包むこととする.例へば「森ビル」ならMori build.と いふ風に.それで用が足りてほしいが,逐次に翻字しなければいけない場合(計 算機による処理や假名それ自身の翻字)にも対応したい.たとへばTiersmaといふ 人がフリジア語文法を書し,それが翻訳されたとする.原題はFryske Grammatikaであるが原題とは別に邦訳されたもののタイトルをローマ字で(日本 語として)表記しなければいけないことがある.その時に翻訳者がタイトルを 「フリジァ語文法」とし原著者を「ティァスマ」と假名書きした場合,どうすれ ばよいのだらうか? 最初に断はっておくが,訳者はなるべく原音に近いやうに と努めたのだらう--ティァは二重母音一モーラを表記するアクロバッティクな 試みであるが二重母音は日本語の音韻ではない.日本語ではティアと二モーラに なるだらう.さうではなければTake-outがテェィクアゥトに仮名書きされてゐる (本来はティクだがティは[ti]で予約ずみで使へない).テャといふ音韻だったら 日本語の音韻の範疇にある(チャの異音.1モーラ).これのつもりなのか?とか く外来語の転写には繁雑さと不合理がつきまとふ(ティァ,テャとティャの違ひ は?).ともかく,本稿ではそのやうな場合,小書きの「ァィゥェォ」を 「\a \i \u \e \o」で示すことを提案する.ただし,これは今あるISO規 格にはないもので,更なる検討が必要である.計算機上で日本語変換を受けもつ IMEでは「\」ではなく,xやlが使はれてゐるが本稿では採用しな い.xlの方法ではアルファベットだけで小書きが表現できて計算機処理上は機能 的である(がゆゑにIMEで採用されてゐる)が,音価として解釈不能なアルファベッ トを充当することは読み手の原則(Kadmon, 2000)に反するためである. 「\」は記号なので知らない人は理解しないだけで誤解する間違ひ がない.この方法に従へば,「ハェ」ha\e,「カェサル」 Ka\esaru,「ロェントゲン」はRo\entogenとなる.フリジア語文 法は「Hurizi\aGo BunPou」作者「T"i\asuma」となる.

名称について

この日本式ローマ字翻字は基本的には田中舘愛橘の日本式とその発展形である ISO3602の厳密翻字に基づくもので,それ以上のものはほとんどないが,ほとん どないなりにも若干の拡張がある.したがって,これは「拡張日本式ローマ字」 とでも呼ぶことができるかもしれない(英訳すれば,X-Japan Style?(笑)).しか し,これまで日本式ローマ字には複数の論者によっていくつかの拡張が提案され てきてゐる(たとへば99式,海津式,竜岡式など). それらは基本的には田中舘愛橘のローマ字の精神を伝へてをり, これらの日本式系統のローマ字を「拡張日本式系統」あるいは「拡張日本式群」 として一括するのはいい.ただし,拡張日本式ローマ字系統にも, それなりにバリエーションがあり,区別して取り扱ふことが必要である. 本稿のローマ字案も,語末促音の「あっ」att, 外来音の「ティ」 t"iなど 独自の拡張があり,これらと相違する部分があるので,精密な考察のため本稿の ローマ字も独自の識別名をもつ必要がある.

まづ最初に思ひつくのは「愛橘式」であったが,これは畏れ多い.また,ご本人 が提案したわけではなく,辻野の独自の拡張が入ってゐるので,この名称は不適 当である.が,これは田中舘愛橘のローマ字の延長線上にあるといふことで, 田中舘愛橘の故地である岩手県二戸郡福岡の属する南部地方に敬意を表して, 「南部式ローマ字」と称することとする.これは同時に南部義籌氏への敬意も含まれ る.

あとがき

個人的に日本式ローマ字翻字そして復古假名遣(とこしへの假名遣)を支持する理 由の第一は「美しさ」である.とはいふものの「美しさ」はある程度は人により けりで,「美しい」と思ふ人には説得力をもつが,さうでない人はさう思はない だけなので,本稿では特にローマ字について,「美しい」以上の根拠をつけて推 薦と提案を行なった.

文献

Kadomon, Naftali (2000) Toponymy -The Lore, Laws and Language of Geographical Names. Vantage Press. 333p. 邦訳ナフタリ・カドモン (2004) 地名学 地名の知識・法律・言語.国土地理院技術資料.(財)日本地図センター. 388頁.
鏡味 明克 (1997) 日本の地名標識におけるローマ字表記の問題点.三重大学教 育学部紀要.v. 48. 1-7.
辻野 匠 (2007) アルファベットと発音(2007-12-26版) 117頁.オンラインドキュ メント.
TuZino, T (2007) Transcription and Transliteration for the Cyrillic. 1p. online document.
辻野 匠 (2007) 勝手なギリシャ文字翻字.4頁. オンラインドキュメント.

代書法

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この文書について...

日本式ローマ字翻字の推薦
(2008-09-28 版)

この文書はLaTeX2HTML 翻訳プログラム Version 2002-2-1 (1.70)

Copyright © 1993, 1994, 1995, 1996, Nikos Drakos, Computer Based Learning Unit, University of Leeds,
Copyright © 1997, 1998, 1999, Ross Moore, Mathematics Department, Macquarie University, Sydney.

日本語化したもの( 2002-2-1 (1.70) JA patch-1.6 版)

Copyright © 1998, 1999, Kenshi Muto, Debian Project.
Copyright © 2001, 2002, Shige TAKENO, Niigata Inst.Tech.

を用いて生成されました。

コマンド行は以下の通りでした。:
latex2html -white -transparent -local_icons -accent_images textrm -split 0 -noaddress web.

翻訳は tuzino によって 平成22年12月13日 に実行されました。


... まさにこの方法である.正確にはISO3602の厳密翻字といふ1
あとから 知ったが,南部義籌(よしかず)氏が明治2年に提唱したローマ字に近い. また,黒川眞頼が明治5年に百人一首をローマ字で翻字したものと酷似してゐる
... してゐる.対応できないのは変体假名2
変体仮名は重要で,単なる遊び 以上の実用的価値もあった.たとへば語頭と語中とで同音の仮名を違へることに よって語句の切れ目を明確にした.また定家假名遣では「を」と「お」と「越」 といふ仮名を使ひわけてゐた.さういふ表記も書きわけられたはうがよいが,こ こでは断念した.

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