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地質學者のための土壤學覺書[執筆中]
(Verschieden Wissenschaft
auf Pedologie für Geologe)
2008-01-08 版

辻野 匠 (Taqumi, TuZino)

10 Julius 2007 起筆

目 次

はじめに

土壌学は地質学と密接な関係があるのだが,不幸なことに地質学では土壌学は正 規の教育過程に組み込まれてこなかった(もうひとつ,地質学にとって重要な学 問なのに正規の教育過程から洩れているものに地形学がある.機会があればとり あげたい).結果,地質学者の土壌に対する認識は希薄で,露頭を隠蔽するやっ かいなものという邪魔物意識が横行している.一方,土壌学は農学の一部として 教育過程に組み込まれてきたため,肥料学や土地改良などの実学的側面が強く, 土壌学のサイドから地質学へのアプローチも少なかったようだ.しかし,実際は 鉱物の風化をはじめ,堆積・運搬・侵食,堆積環境との関係,地質学的時間をか けた土壌生成や有機物の動態,保存と分解,気候との関係等々と地質学との接点 は盛り沢山である.

ところで,生物学の分野では分子生物学やバイオテクノロジーの発展によって分 類学や生態学は日陰となった.彼らは危機感をもって,地道に社会に対して「生 態系」「生物多様性」を訴へてきた.彼等は「環境保全」「持続可能な人間界 sustainable society」を合言葉にしているが,単純に実学的価値を訴へている のではない(実存的価値なら訴えているかもしれない).「知るを愛する」ことの 大切」さや「まだ知らないでいるが本当は重要なことかもしれない可能性」を訴 へているのである.ひるがえって地質学では資源や地震といったビックビジネス に依存しているが,「知るを愛する」ことや「地球の歴史」を知ることも意味を 訴へているだらうか.どんな学問をそれを理解してくれる人がいて成立する.私 がここでいう理解とは学問の実利的価値の理解ではない.実利的価値とは力であ る.力のことなら犬だって理解する.だから,そういうものをことさらに強調し なくても理解はされる.ここでいう理解とは学問の美的価値の理解であって「知 るを愛する」ことである.どんな学問でもおもしろくなければ学ぼうとする若者 がいなくなる.そうなってからあわてて社会が認知し政府が助成しようとも結局 学問としては絶家となる.

土壌学は地質学と生態学との接点であるばかりではなく,社会との接点でもある. 地質を知らない国民はありえても,土を知らない国民はありえない.それどころ か,地質から離れて生きていける人間はいないことはないが,土から離れて生き ていける人間はいない.土壌学を学ぶことは地質学・地質学者をexpandさせる試 みとして有効であると私は考える.

土壌学簡単紹介

土壌学をつくった人たち

全ての学問の背景には生身の人がいる.

ドクチャエフ(V. V. Dokuchchaev)

Roger Revelle

宮澤賢治

土壌とは

土壌とはなんであるか?それを問ふ前に,土壌とは何ではないか?と知ることは 土壌の理解に役立つ.もっとも,白鳥はカラスではないが,それを知ったところ で白鳥が何かは直接はわからない.「何ではないか?」はそれ自身では「何であ る」ことを規定しえないためである.しかし,「白鳥はカラスではない」という 命題をよく研究してみると,白鳥はカラスと同じ鳥であって,カラスとは色が違 うということがわかる(はずである).ここで,次のように問うてみる.


月には土壌はあるか?.答へは「月には土壌はない」である.月面の 写真をみると確かに,砂粒やそれより細粒の粉体が地表(月表といふべきか?地 面ならぬ月面)に分布している.その粒子は互いに独立しておりガサガサになっ ているように見える.足跡だって月面に残る.これは土壌なのだろうか?確かに 粒子の粒径やほとんど固着していない様子などは地上の土壌のそれを一致する. しかし,残念ながら月面の粉体は土壌ではない.こういうものをレゴリス (regolith)と読んでいる.堆積層というのは土壌よりも定義が広く,レゴリスは 土壌には含まれないが堆積層には含まれる.

このように,土壌は単に岩石が風化や破壊されて粉体になったものではなくて, 動植物や微生物との作用で生成してきたものである.そして結果として,土壌は 動植物や微生物を養う.このような土壌のdiagnosisは,水の存在,温度条件, 適当な日射,空気など生物を支える要件を満すことが必要である.これを満して いる天体は現在の知見では地球に限られる.地球は水の惑星かもしれないが,同 時に土の惑星でもある.残念ながら月の表面の粉体(レゴリス)には生物との作用 が欠落している.したがって,これは土壌とは云へない.しかし,同じようなレ ゴリスに火山島における溶岩や火砕流の風化物がある.このままでは土壌とはい へないが,微生物や植物の作用で火山島も土壌に覆われるようになる.三宅島や 伊豆大島を見てみるとよい.そこには土もあり樹も根付いている.

なお,壌1の傍の襄は「混ぜ込む」という意 味であって,壌とは丹念に耕された豊かな土地を指す.同時に,醸造の醸は麹を 混ぜ込んで醸す2ことであるし,謙譲の譲は相手の意見 を混ぜ込むという意味である.土壌や醸造のように混ぜ込まれたものはふっくら するから,襄は「ふっくらした」という意味も包含している.穣はイネがふっく ら実る樣を示すので,人名としてはミノルとなる.

月のレゴリスはいつまで経っても土壌にはならないが,火山島のレゴリスはいつ から土壌になるのか判別としない.このような作用は連続的に起こるためである. たとへば湿潤なところでは噴火後,1ヶ月もすれば微生物がはりついていること がある.これはもう土壌なのか? 10年たてば土壌かもしれない.では9年と11ヶ 月目は土壌ではないのか? 連続体を明快に分類する方法はない.研究の目的に 適った基準でとりあえず分けてしまうしかない.しかし,基準はあくまで,その 目的に適った(と誰かが思った)だけの基準であるから,基準にあくまで拘泥する ことは学問の発展を束縛することに注意されたい.

土壌の定義は,いろいろな学者が試みているが, ここでは,土壌学の祖,ドクチャエフの定義を紹介する.

土壌は気候,地形,母材や生物の影響を受けて生成した独自の形態,すなわち 物理的・化学的・生物的性質をもつ「自然体」である.

なおアメリカ土壌学会の定義も紹介すると,

地球表層に限定された自然物(原則)であり,生物を含んでいて,野外で植物を支 えているか,または,支えることができるもの.

となっている.両者ともに自然体,自然物(natural body)という言葉をもちいて いる.

New Zealandの土壌学者たちは下記のような詩(?)を出して,土壌とdirtとの違 いを強調している.

Never treat soil like dirt!
Soil does beautiful things!
We dig soil!

土壌の構成要素

土壌の基礎

土壌の三相と構造


三相

三相とは固相・液相・気相のことである.これらの割合を特徴つけるためは体積 比をもちいる.重量で比較すると気体は重さがほとんどないので正確に比べられ ないためである.

水田土壌や重粘土壌は固相45%, 液相50%,気相は5%と気相の割合に乏しい.砂 丘土は固相50%, 液相10%, 気相40%と気相が多いが保水力は乏しい.火山灰土 は固相が20%, 液相30%, 気相50%とスカスカで気相が多い.


土壌構造

土壌構造は団粒構造,単粒構造,壁状構造に三分される.

団粒構造: 粘土や腐植の作用で結合した塊(団粒)になり,団粒が集 合して土壌を形成している構造.団粒間の間隙は粗間隙といい,通気や透水が自 由に行われる.団粒内にも微少な間隙があり,これを微間隙といふ.微間隙には 水が蓄えられる.団粒構造は通気性と保水性の両方を満す耕作に適する土壌であ る.

単粒構造:団粒にはならず,そのまま土壌を形成している.砂丘の土 壌など.

壁状構造:粘土に富み,粒子が密に詰っている構造.関東ロームの心 土など.通気性は一般に悪いが,関東ロームのように壁状構造の中に管状の通路 が発達している場合は透水・通気性はよい.

土壌鉱物

土壌には多くの鉱物が含まれており

粘土

土壌の粘土の理解は変成岩や変質岩にある粘土よりも大幅に難しい.それは非平 衡と複雑系の二言で説明できる.土壌粘土のむつかしさは地質学的時間の経過し た地層の粘土と比べても大きい.土壌粘土の大きな特徴として,(1)非晶質粘土 を多く含む.(2) 晶質であっても地層の粘土と比べて,結晶度が低い.(3) R$ _2$O$ _3$, SiO$ _2$のような遊離鉱物が多く含まれる.(4) 複数の鉱物種から なる.(5) 混合層層状珪酸塩が多いこと.(6) 格子内置換のため,化学組成が不 均質で,変異に富む.(7) 腐植と不可分の関係にあり,複雑な化合物を形成して いること.があげられる.これらの特徴は分析を困難にする.


表: 土壌に産する代表的な鉱物
鉱 物 化学組成 XRD(Å)
非晶質 アロフェン 1$ \sim$2SiO$ _{2}\cdot$Al$ _2$O$ _{3}\cdot$5H$ _2$O broad
    クリストバライト SiO$ _2$ 4.0X
    ギプサイト
    ベーマイト $ \gamma$-AlOOH 6.1
    ゲーサイト $ \alpha$-FeOOH
    レピドクローサイト

$ \gamma$-FeOOH

6.2
    ヘマタイト
      イモゴライト SiO$ _2\cdot$Al$ _2$O$ _3\cdot$5H$ _2$O 14
    ハロイサイト Si$ _2$Al$ _2$O$ _{10}$(OH)$ _4\cdot$4H$ _2$O
    メタハロイサイト Si$ _2$Al$ _2$O$ _{10}$(OH)$ _4$
    カオリナイト Si$ _2$Al$ _2$O$ _{10}$(OH)$ _4$
    イライト (Si,Al)$ _4$(Al,Fe,Mg)$ _2$O$ _{10}$(OH)$ _2\cdot$K$ _n$ 10
    バーミキュライト\dag (Si,Al)$ _4$(Fe,Mg)$ _2$O$ _{10}$(OH)$ _2\cdot$M$ _n$
    バイデライト\dag
    ノントロナイト\dag (Si,Al)$ _4$Fe$ _2^{+3}$O$ _{10}$(OH)$ _2\cdot$M$ _n$
    モンモリロナイト\dag Si$ _4$(Al,Mg)$ _2$O$ _{10}$(OH)$ _2\cdot$M$ _n$
    クロライト (Fe,Mg)$ _3$(OH)$ _6\cdot$(Si,Al)$ _4$ 14
          (Al,Fe,Mg)$ _3$O$ _10$(OH)$ _3$


\dagは膨脹性鉱物.Mは適当なカチオン



粘土の機能

比表面: 2乗/3乗効果である.界面現象が活発となる.

荷電:粘土が持つ荷電には,永久荷電と変異荷電に大別できる.

変異荷電は鉱物や腐植の表面の官能基(-0H, -CO$ _2$H, -NH$ _2$など)に由来する 荷電であって,環境によって荷電量が変異する.結晶表面では結合が満されない ので,荷電している.粘土鉱物の場合,層状珪酸塩鉱物なので荷電表面が多い. また腐植は有機物の複合体で電離可能な多数の官能基を有している.これらの荷 電は基本的には弱酸または弱塩基だが,pHによって荷電状態が変化する.一般に は酸性下で陽電荷が弱まり,陰電荷は強まる.塩基性下では逆である.陰陽の荷 電が交替する時は荷電が0を通過する.この時のphを等電点といふ.粘土コロイ ドは陽性コロイド(R$ _2$O$ _3$)と陰性コロイド(SiO$ _2$や腐植)との複合体で, 陰陽コロイドの量比が低いほど,等電点の値は高くなる(塩基性で電荷が交替). 陰陽コロイドの量比は腐植を含まない粘土だけの無機化学的環境では珪礬比であ る.R$ _2$O$ _3$の等電点は7から8,アロフェンの場合は6前後である.

永久荷電は,格子置換に由来する荷電である.粘土鉱物の場合,層状珪酸塩のSi がAlに置換(同型置換.イオン半径が類似するもの同士の原子が置換すること)し ていることがある.酸化数はSi$ ^{+4}$だが,Al$ ^{+3}$なのでSiがAlに置換した 粘土は置換原子一個あたり,負に荷電することになる.この陰電荷は強い酸性を 示し,pHなどの環境によって変化せず安定している.2:1型の粘土鉱物に多い.

応用:永久荷電は安定していて,肥料などの栄養塩を保持しやすいが,一般に永 久粘土の粘土は粘着性が大きく3,詰まりやしすいので,植物 にとっては都合のよいことばかりではない.変異荷電は不安定で栄養塩を入れで も保持しなかったり,逆に固定して遊離しなかったりするが,全体としては bufferとして有効に機能する場合が多い.

イオン吸着:荷電した粒子に対して,反対に荷電した粒子がクーロン 力で引き寄せられる.引き寄せられるイオンの多くは弱い力で結合しているので, 交換可能である.これを塩基置換と呼び,植物に必要なミネラルを供給するため に重要な機能である.また,塩基の交換容量は鉱物種によって異なるが,バーミ キュライトとモンモリロナイトで高い値を示す.カリやアンモは2:1型の粘土鉱 物,特に珪酸塩四面体層が負に帯電しているバーミキュライト型の鉱物によって 捕捉されやすい.この場合はイオン半径と層間距離が近いため,一旦固定される と抜け出しにくく非交換態となる.燐酸イオンは非晶質アルミナやアロフェンの アルミナに由来する陽荷電によって捕捉されやすい.

水分吸着:水分子は電荷が局在化しており,酸素原子に負,水素原子 に正の極性がある.そのため,ファンデルワールス力により荷電した粘土鉱物に 弱く吸着されやすい.吸着には鉱物表面に直接吸着される場合と別のカチオン/ アニオンによって間接的に吸着される場合とある.いづれにしても砂に比べて粘 土鉱物はかなり水を吸着し得る.これは保水力の源であり,同時に粘土の粘りの 原因でもある.

コンシステンシー:土に力を加へた時の変形をコンシステンシーと呼 ぶ.コンシステンシーは含水量に左右される.含水量が過剰な場合は,かゆのよ うな粘性のある流体となる.水分が抜けてくるとゼリー状の半固体となり,力の 大小によって作用が異なり,弱い力には弾性反発するが,強い力対しては変形す る.水分の低下により強度を増し,粘性が下り,脆性が増す.これらの挙動は, 粘土鉱物と水分子との結合に由来する.水分が多い時は粘土鉱物と粘土鉱物の間 に水分子が豊富に存在し,これらは弱い力で拘束しているだけなので容易に変形 する.水が少なくなると拘束力が増し,今ある形態(ミクロの目では配置)を維持 しやうとする力が強くなる.

緩衝(バッファー)効果:上で見たやうに粘土は保有できる水分やイオ ンの量の幅が広く,周囲の環境の変化に対して変化に対抗し,変化速度をやわら げる能力をもっている.これをバッファー効果という.

凝集と分散:粘土は水と親和する(仲がよい)ため,泥水は長い時間か かって泥と水に分離する.このように水の中に粘土が懸濁した状態になっている ことを分散といい,逆に,粘土同士が集まってかたまることを凝集という.凝集 は,粘土粒子が寄り集まって,もやもやした小さな凝集体(floc)を形成するのが わかる.これを綿毛化(floc)といふ.凝集は強い電荷をもつ塩の存在によって起 りやすい.川の水に含まれる懸濁した泥も海水に接すると海水の塩の電荷によっ て急速に凝集し沈殿することが知られている.

腐植

腐植は土壌を構成する有機物の代表的なもので,粘土鉱物と同様に土壌の振舞い に重要な役割を果す.植物組織が残っているものを粗腐植といひ,十分に分解し てコロイドになっているものを腐植をいふ.腐植は様々な組織の分解過程によっ て生じた複合体であり,詳しい構造や組成は明らかではない.


腐植の分類

腐植は正体が不明なので,古典的な溶媒による溶解分別法(分画)により分類される.溶解分別法は酸やアルカリで溶解するかしないかの組合せで腐植を特徴づける方法 である.もっとも基本的な方法では,最初に苛性ソーダを与へ,不溶なものをヒュー ミンとし,溶解したものに対しては硫酸を与へる.硫酸に可容なものはフルボ酸 で,残査を腐植酸とする.これらの分類は,溶解で分画したものの総称であって, 特定の分子を示唆しない.

腐植 アルカリ
腐植酸 溶解 沈殿
フルボ酸 溶解 溶解
ヒューミン 不溶 --

腐植の分類方法はいろいろ考案されている.

シモン法:腐植酸の光学的性質で分類.

チューリン法:高度は分画.

溶解のしやすさから溶解しやすいフルボ酸よりもヒューミンのほうが分子が複雑 であると推測できる.色もフルボ酸は褐色だがヒューミンは黒色で,より縮合・ 重合が進んでいることを窺わせる.


腐植の役割

コロイドとしての特性: 腐植は水素が切れやすいので,負に帯電し やすい.荷電量は粘土に比べると格段に多く,よりイオン交換能・緩衝能・保水 力が高まる.

鉄やアルミとの結合:腐植のない土壌では鉄やアルミは粘土から溶脱 した後,水酸化物として土壌中に残留する.腐植が存在すると鉄やアルミは腐植 と結合する.

土壌構造:腐植は粘土やR$ _2$O$ _3$の二三酸化物と結合して,(ミク ロの目からみると)巨大な複合体を構成する.これをレンガのようにして,土壌 の多孔質な構造が形成される.

栄養塩:腐植化の未熟な腐植は分解される時にN, P, Si, Caなどの養 分を放出する.これが植物の栄養塩となる.高度に腐植化がすすんだものは,ほ とんど分解されず栄養塩の供給源としては期待できない.

土壌層位

土壌も地層のように層状構造をもつ.地層は下位のものほど古く,上位のものほ ど新しい.新しいものが上に上に堆積していくためである.土壌はこれとはやや 趣が異なっており,土壌生成作用により土層に分化することで土壌層位が形成さ れる(土層分化).強いて云へば土壌は(上に上に堆積していくと同時に)下に下に 成長していくためである.地層のような上に累重する層のことをbedといい,土 壌層位の層はhorizonと云い分ける.そうしないと,時間断面を見ているのか, ある時間での層序断面を見ているのが混乱するためである.生痕学で,生痕の層 位のことろtierと云うもの同じ考え方である.

土壌層位の命名法を確立したのはドクチャエフで,彼の確立したABC層位法は今 でも使用されている.


A層位

土壌の最上位を構成する.一般にはもっとも有機物に富む層位で,暗〜黒色で, 粒状から屑粒状構造が発達し,粗鬆で細根を含む.A層は細分されている.

A00:A$ _{00}$とも.新鮮な落葉層.

A0:粗腐植層(原組織をとどめるが腐朽した落葉層).

A1:腐植層と無機物の混合層.O層とも別称される.ここは有機物と 粘土の作用の活発なところで,土壌学的に重要であるから細分されることが多い (下記).

A2:粘土の溶脱層(レシベ土壌など).石英のような風化に強い鉱物は 残存.色は淡灰色.溶脱層とか漂白層とも(俗称として)呼ばれる.

Ae:R$ _2$O$ _2$の含水酸化物の溶脱層.典型的にはボドソルに産し, A2の下位に出現する.

A3:腐植をある程度含み,粗鬆な土壌構造をなす.

(A)層:A層基底.生物の作用が認められB層とは異なる.

なおA1(O)層の森林土壌学ではリターの分解作用は生態系にとって重要であるから より細分化された層位が用いられる.

L層.リター層. 新鮮な落葉層.葉の外形はほとんど完全で,微細構造 もかなり保存される.

F層.腐葉層. 落葉分解層.外形を留めている.微細構造はかなり失 なわれている.

H層.腐植層とも. 分解腐植化層.外形・微細構造ともに原形を留めていない.

まだ,森林土壌学では,腐植と粘土の産状により下記のように土壌型を分類して いる.これは層位とは別の概念であることに注意されたい.

ムル型 腐植と有機物が完全に混合している.有機物は原形を留めてい ない.A(1)層がH層だけで構成されているような土壌.

モル型 腐植が粗で,落葉が厚い.A(1)層のほとんどがL層のような土壌.

モーダー型 ムル型とモル型の中間.


B層位

B層位は土壌層位の中位の土層で,A層位と次に述べるC層位との中間に位置する. 地下水位よりも上位にあり,C層よりは風化が進み,粘土集積やR$ _2$O$ _2$は多 い.赤色から褐色,黄色で緻密な角柱状または柱状構造をもつ.

B2:溶脱した成分が集積する層位.特にR$ _2$O$ _2$の集積層はBiとい う.有機物の集積層はBh. 両者の集積層はBihといふ.これらを総称してボドソ ルB層といふことがある.粘土の集積層はBtといい土性B層という.

B1:B2とA層との漸移層.

B3:C層とB2との漸移層.


C層位

母岩の構造は残っているが,風化されてもろくなっているもの.地質学者の目か らは「くさった岩」である.


Dr

新鮮といってもよい母岩.DはABCの下の意,rはrockの意.


これ以外の層位

G層:グライ層.地下水や停滞水による還元層.

しばしば酸化と還元は時期的に繰り返し,一様に還元状態でいること稀な場合が ある.その場合には土壌に斑紋が出現する(還元性の領域がパッチ状に残る). これはBgのように添字で示す.

P層:泥炭層.

M層:黒色泥炭層.

他にも,細分する時には添字をつけて示す.A12はA層の第1(つまりA1)層位の上 から2番目の層位を意味する.石灰集積層はBca,石膏はBcs,強塩の沈殿層は Bsa,シリカの集積層はBsi,盤層はBcやBmのように示す.

土壌物理学

空気

温度

土壌構造

土壌の構造は粒子配列により単粒構造と団粒構造とに大別できる.単粒構造とは, 土のコロイドやその他の粒子がそのまま重なっているもので,土塊をなしている. 団粒構造とは,単粒の結合によって生じる構造である.有機質やコロイドによっ て単粒子が結合すると微少団粒となり,更にそれが集合してより大きな微少団粒 となる.これが繰り返して団粒となる.団粒の最低粒径は0.2mmであるが,だい たい1-5mmのものが耕作に適していると云はれる.このような団粒化の過程によっ て生じる様々な構造には名称がついている.それくらいの粒径の団粒で生じる間 隙により空気の流通がよくなり,しかも,それくらいの粒径の団粒内にある微少 空隙により水が保たれるためである.

形状   大きさ(mm)
板状(platy)   1-10
柱状 角柱状(prismatic) 10-100
  円柱状(columnor) 10-100
塊状 角塊状(angular blocky) 5-50
  亜角塊状(subangular blocky) 5-50
  粒状(granular) 1-10
  屑粒状(crumb)[多孔質] 1-5

土壌の力学的特性

土壌化学

酸性と塩基性

酸性/塩基性の定義はいろいろあって,概念自体はイスラム科学の時代や錬金術 の時代まで遡る.今日的な酸・塩基はArrheniusによって次のように定義された. すなわち,酸は水溶液中で水素イオン(H$ ^+$)を生じるもの,塩基は水酸化物イ オン(OH$ ^-$)を生じるものである.しかし,これは水溶液中にしか定義されので, BrønstedとLowryはそれぞれ独自に,Arrheniusの酸・塩基の概念を拡張した. 酸はプロトン(水素イオン)を与へる物質(proton donor)で,塩基はプロトンを受 けいれる物質(proton acceptor)である.この定義による酸・塩基をBrønsted の酸・塩基といふ.土壌学の分野ではArrheniusの酸・塩基の定義を採用し,酸 性度は水素イオンの濃度で決定され,pHで示す.これは水素イオン濃度の対数を 負にしたものである.

$\displaystyle {\rm pH}=-\log [{\rm H}^+]
$

温度一定の時,水の溶解度積は一定で $ [{\rm H}^+][{\rm OH}^-]=10^{-14}$とな るので,半分の7の時が中性で,これよりも小さい時は酸性,大きい時は塩基性 となる.理科の実験ではBTB溶液やリトマス試験紙を用いるが,非常に定性的で 比較や継続的研究に不便である.測定としてはガラス電極をセンサーとするpHメー タを用いることが多い.ただし,この方法では土壌に豊富に水がある場合の酸性 度を計測できるのであって,土壌に水が豊かではない場合には測定できない.そ こで,土壌を試料として水や1規定の塩化カリウム溶液でうるおしたもについて pHを測定し,=6.8とかpH(KCl)=6.3のように示す.KClの場合はKがコロイド中のH を追い出して交換していまうので,H$ ^+$イオンはKClを加へる前よりも増加して しまう.したがって,pH(H$ _2$O)よりpH(KCl)のほうが酸性に寄っている.この ことから土壌には直接酸性を示さないが,条件によっては酸性をして機能するモ ノが含まれていることが推測される.

このようなイオン化していなくても潜在的に酸として作用しうるモノの容量を酸 度といい,pH(KCl)で処理した懸濁液の上澄みを0.1規定NaClで滴定して示す. pH(KCl)の値自体を潜酸性といふ.これら土壌の酸度を規定しているのはAlイオ ンの動態である.交換態アルミニウムも水溶性アルミニウムも加水反応により, 水から水酸基を奪い,水素イオンを排出する(後述).

なお,地質学的な酸・塩基の概念は近代化学の前に既に確立されており,酸とは 珪酸を多く含む岩石・鉱物,塩基とは珪酸が乏しいもので,必然的に金属イオン を多く含むものである.花崗岩は酸性岩であるが水素イオンが多いわけではない. また,地質学におけるアルカリとはアルカリ金属を多く含む岩石・鉱物で,水酸 化物イオンとは直接関係ないし,酸性⇔塩基性とは独立の概念である.たとへば 花崗岩的な珪酸の量でもアルカリが多ければ,アルカリ岩と称さるる.

日本では石灰岩の分布が乏しい(ヨーロッパなどは広範囲に石灰岩が分布する)た め,塩基性土壌は少なく,ほとんどが酸性土壌である.


天水による土壌の酸性化

ここでは酸性雨といふ自然破壊の話の前に,一般的な天水による酸性化について 述べる.天水(雨)には炭酸ガスが僅かに溶存しており,pHはやや酸性の5.7程度 である.それは下記のような平衡関係に起因している.

H$ _2$O + CO$ _2$ $ \rightleftarrows$ H$ _2$CO$ _3$ $ \rightleftarrows$ H$ ^+$ + HCO$ _3^-$

先ほど述べたように土壌中のコロイドはイオン交換能があり,H$ ^+$は陽イオン 交換侵出力の強いので,Ca$ ^{++}$, Mg$ ^{++}$, K$ ^{+}$などの交換性塩基が溶 脱してしまう.追い出された塩基は水溶性塩基に態を変ゑ,地下水系に溶出して しまう.こうして土壌中の特に粘土中から塩基がHで置換され,そのうちに粘土 の骨格を作っているAlも交換態のAl$ ^{3+}$となる.このように弱炭酸水の浸透 によって,だんだん粘土の構造が破壊されてしまう.溶脱したAl$ ^{3+}$は水と 加水分解反応を起こして,

Al$ ^{3+}$ + H$ _2$O $ \rightarrow$ Al(OH)$ ^2+$ + H$ ^+$
Al(OH)$ ^2+$ + H$ _2$O $ \rightarrow$ Al(OH)$ _2^+$ + H$ ^+$
Al(OH)$ _2^+$ + H$ _2$O $ \rightarrow$ Al(OH)$ _3$ + H$ ^+$

のように次々とH$ ^+$イオンを生成する.このような土壌の酸性化は日本のよう に降水量の多いところでは頻繁に起っている.


海成層(含硫化物土壌)の酸性化

干拓地や海成層,あるいは内湾や河口,下流河川の浚渫土の客土にはパイライト (硫化鉄, Fe$ _2$S)が含まれている.これはもともとは海水中の硫酸イオン (SO$ _4^{--}$)を硫酸還元菌が還元して生成したもので,還元雰囲気で安定であ るが,酸素に触れると酸化がはじまる.パイライトは酸化されると硫酸イオンを 生じる.これにより土壌が酸性になる.ただし,細かく分析するとパイライトの 酸化は5段階に区分できる.

第一段階:緩慢な化学的反応.酸化誘導体の硫酸イオンの他に鉄イオ ンが遊離する.

FeS$ _2$ + $ \dfrac{7}{2}$O$ _2$ + H$ _2$O $ \to$ Fe$ ^{2+}$ + 2SO$ _4^{2-}$ + 2H$ ^+$

海成層の陸化.Na,Mgの溶脱と緩慢なpyriteの酸化.pHは6-7に留まる.

第二段階:生化学的な反応.水酸化鉄の生成.

FeS$ _2$ + $ \dfrac{15}{4}$O$ _2$ + $ \dfrac{7}{2}$H$ _2$O $ \rightarrow$ Fe(OH)$ _2$ + 2SO$ _4^{2-}$+4H$ ^+$

乾燥にともなう土壌の細片化によって土壌の通気性や透水性が強まり,硫黄酸化 細菌や鉄酸化細菌が蔓延る.急速に反応は進み,pHは3にまで酸性化する. Fe,Al,Mnなどの移動・集積.

第三段階:還元鉄の酸化.ジャローサイトの形成

FeS$ _2$ + $ \dfrac{15}{4}$O$ _2$ + $ \dfrac{5}{2}$H$ _2$O + $ \dfrac{1}{3}$K$ ^+$ $ \rightarrow$ $ \dfrac{1}{3}$KFe(SO$ _4$)$ ^2$(OH)$ _4$ + 3H$ ^+$ + $ \dfrac{4}{3}$SO$ _4^{2-}$

第四段階:強酸性下の平衡状態.ジャローサイトはpH3.6-3.8で平衡 状態となる.

KFe(SO$ _4$)$ ^2$(OH)$ _4$ + 3H$ _2$O $ \rightleftarrows$ 3Fe(OH)$ _2$ + K$ ^+$ + 2SO$ _4^{2-}$ + 3H$ ^+$

の平衡式により強酸性が維持される.硫酸イオンアや水素イオン(酸性)が系から 出ていかなければpHは3.6-3.8のまま強酸性が持続する.

ちなみに硫酸塩土壌とcat clayと云ふ.それは土壌がジャローサイトの黄色で猫 の糞に似ているからとも,もともとのオランダ語(海浜湿地の干拓でしばしば硫 酸塩土壌問題に遭遇)で「有害な」を意味しれいるとも云はれている.

第五段階:終息

乾燥と湿地化が繰り返されると,硫酸イオンは洗浄され系から除外される.もし 酸化されるべきパイライトがなくなっているとすれば硫酸は供給されないので平 衡式が右がわに移行する.つまりジャローサイトの加水分解反応になる.ここで は,カルシウムイオンが吸着するためpHは5程度まで回復する.


施肥による酸性化

硫安(硫酸アンモニウム)や塩化カリなどの化学肥料を土壌に施すと,NH$ _4^+$や K$ ^+$が土壌中にとける.これは粘土などのコロイドの交換性カチオンを交換し てコロイドに吸着される.これを植物(この場合は作物)が吸収すると,空いたと ころを土壌中の電離したH$ ^+$が埋める(つまり,カチオンをH$ ~+$が交換する). 天水の時と同じで,Al$ ^{3+}$が土壌に増え,酸性になる.

他にも,窒素肥料の施肥の著しいビニールハウスでは別の酸性化のプロセスもあ る.アンモニウムイオンがアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌の連鎖的作用で 硝酸を生成するので土壌が酸性化する.


有機酸による酸性化

土壌中の有機物は完全に分解が進めば水と二酸化炭素になるが,反応が最後まで 進まないときは中間生成物の有機酸を生成し,土壌が酸性化する.そして大抵の 場合,最後まで分解されない(もし,最後まで分解されたら腐食なぞ存在しない). 例外的に熱帯雨林では有機物はほとんど完全に分解されるが,冷温な地域や多湿 な地域では有機酸が生成することが多い.腐食は土壌中の反応を媒介しても主体 とはななあいが,これは腐食とは違って活動度の高い酸で反応の主体となる.冷 温な地域としてシベリアのポドソル土壌では有機酸が生成し,その酸によりA層 中の鉄やアルミニウムが溶脱することで漂白層が形成する.多湿な環境として湿 原では水による隔離効果のため分解が進まず,有機酸が生じ,酸栄養となる.泥 炭地でも鉄やアルミニウムが溶脱され,土が褐色になる.


酸性度とイオンの動態

基本的に,多くの栄養塩は微酸性(pH6)から中性のときにイオンとして安定して いる.リンやカルシウム,マグネシウム,硼素もpHが高いほうがイオンとして安 定であるがアルカリ性になると低下する.鉄やマンガン,亜鉛はむしろ酸性雰囲 気ではイオンとして活動的だが,pH6以上から活動度が低下し,アルカリ性では 水酸化物を形成・沈殿するため,植物としては利用できない.

酸化と還元

酸化・還元は酸・塩基の概念とならんで,化学反応の中でもっとも重要な概念の 一つであって,酸・塩基の概念と同様に概念自体に発達の歴史がある.もっとも 原始的が概念では,ある物質が酸素と化合することを酸化と呼ぶ.しかし,化学 反応の中には酸素は失っていないが酸化と同じような反応がある.たとへば炭化 水素に酸素を化合させると大体は燃えて炭酸ガスと水蒸気になってしまう(もち ろん,これは炭素から見ると酸素と結合する反応なので文句なしに酸化である) が,反応を調節すると,炭化水素の水素だけを酸素と反応させることができる.

C$ _n$H$ _{2(n+1)}$ + $ \dfrac{n+1}{2}$ O$ _2$ $ \rightarrow$ nC + (n+1)H$ _2$O

この場合,水素は酸素と結合しているので還元であるが,炭素から見ると酸素は 関係ないので,酸化とは云ひかねる.しかし,酸化を酸素と結合するか水素を失 う反応と定義しなおせばこれも酸化となる.更に,酸素も水素も関係しないが反 応としては酸化としかいいようがないものがある.

2Fe$ ^{3+}$ + $ \dfrac{1}{2}$ S$ ^{2-}$ $ \rightarrow$ Fe$ ^{2+}$ + S

この反応は第二鉄イオンが酸素で還元されて第一鉄イオンになる反応を類似して いる.酸化の鍵は酸素ではなくて,電子である.今日的には酸化とはある物質が 電子を失うこととして定義されている.電子を失しなう物質を電子供与体 (electron donor)といふ.失なった電子は別の物質が受けもつ.この時,この物 質は還元されたといひ,この物質のことを電子受容体(electoron acceptor)とい ふ.原始的には還元とは酸素を失う反応である.酸化・還元は同時におこるが同 所的でなくてもよい.電池はその好例で,片方の電極で捨てられた電子が電線を 通じて反対側の電極で,別の物質に受けわたされる.これを酸化還元系といふ.

この電池の原理を用いて,Fe$ ^{3+}$, Fe$ ^{2+}$のような酸化還元状態を定量化 できる.Nernstにより酸化還元電位は次のように定式化されている.

Eh = E$ _0$ + $ \dfrac{RT}{nF} \log \dfrac{ {\rm a}_{ox} }{ {\rm a}_{bs}}$

ただし,E$ _0$は標準電位で,a$ _{ox}$=a$ _{bs}$の時のEhである.Rは気体定数, Tは絶対温度,nは反応に酸化する電子の数,Fはファラデー定数.a$ _{ox}$は酸 化物質の活量(mol/l).a$ _{bs}$は還元物質の活量となる.

この定式のよいところは電位であるから電圧計で測定できるところである.もち ろん,単位はV(ボルト)である.


EhとpHの関係

pHが高くなるとEhは一般に低下する.これはプロトンは酸そのものであると同時 に電子受容体つまり還元剤でもあるためである.水素の電極反応は

$ \dfrac{1}{2}$H$ _2$ $ \rightleftarrows$ H$ ^+$ + e$ ^-$

で,Ehは

Eh = $ -$0.0295 $ \log$ P$ _{H_2}$ $ -$ 0.059 pH

であるから,P$ _{H_2}$が1気圧の場合のEhは

Eh = $ -$0.059pH
となり,Eh/pHは$ -$0.059の一定となる.

もっとも,土壌では酸化還元系は非常に複雑であって,片方からもう片方を簡単 に決定することは困難である.

土壌は大気との平衡状態にあり,土壌空気はO$ _2$に富んでいる.したがって酸 化雰囲気が優勢であって,土壌のEhは常に高い状態にある.湖底や海底では,上 の水塊との循環がなくなれば無酸素状態が容易に実現するが,土壌ではそのよう なケースは非常に稀である.しかし,大量の有機物が堆積・施肥された場合や, 湛水した水田のように大気との平衡が遮断された場合には,水中にわづかに溶存 していたO$ _2$も生物活動で消費され,還元状態が発達する.この過程は,まづ 電子受容体としてO$ _2$を消費し,次いでNO$ -$, Mn$ ^{4+}$, Fe$ ^3+$を消費す る.これらの反応は順番に,硝酸還元(脱窒)反応,マンガン還元反応,鉄還元反 応と云はれている.Fe$ ^{3+}$の還元によりFe$ ^{2+}$が生成すると,Ehが低下す る.この段階で嫌気性細菌が活動しはじめ,硫酸を硫化水素に還元する硫酸還元 や,炭酸や酢酸などの有機酸をメタンに還元するメタン生成反応が進行する. このような反応はEhの高いものから順に低いものに移行するしている.

土壌の場合,硫酸イオンは施肥によらない場合は低濃度なのでEhは鉄の動態によっ て規定されることが多い.海洋では硫酸イオンが豊富で,硫酸還元は反応の主体 となっている.淡水の湖沼では土壌同様,硫酸イオンは乏しいが容易に還元雰囲 気に移行しやすい.

元素 酸化状態 還元状態
C CO$ _2$ CH$ _4$
N NO$ _3^-$ N$ _2$, NH$ _4^-$
S SO$ _4^{2-}$ S, S$ ^{2-}$
Fe Fe$ ^{3+}$ Fe$ ^{2+}$
Mn Mn$ ^{4+}$ Mn$ ^{2+}$

土壌生物学

生物は土壌と単なる岩石の物理的・化学的風化産物以上のものにしている要素で ある.肥沃な土壌には微生物や動物が多数存在し,有機物の分解や様々な化学反 応・物理過程を担う素地を形成している.

土壌生物の分類方法は生態学的な区分とサイズによる区分がある.生態学的な区 分では,生物を(1)生産者,(2)消費者,(3)分解者に区分する.土壌生物には, 藻類などの生産者もいるが,大体において消費者・還元者である.サイズによる 区分は,大きさで区分する方法で,まづ,動物と微生物にわけられる.

土壌微生物

土壌には1gあたり数千万〜数億の微生物が棲息している.これらの微生物は細菌, 放射菌,糸状菌,藻類にわけられる.この分類は純系統分類学的なものではなく, 慣用的なものである.たとへば藻類であっても系統学的には細菌に分類されるも のもある.

藻類

藻類(algae)の種類はかなり多く,水田のクロレラ(緑藻の一種)や付着棲の珪藻 (河川の石に付着する.アユのエサになる)などの単細胞からコンブのような多細 胞のものまでいろいろである.土壌中には,藍藻や緑藻が繁殖する.藍藻は細菌 と同じ原生動物で,細胞核や葉緑体をもたないが,クロロフィルはもっている. 藍藻の特筆すべきは,彼らは窒素固定能力があり,土壌に窒素を付加させる働き (肥沃化)をする.また,藻類は菌類と共生して地衣類として繁茂することがある.

糸状菌

菌類(fungi)の多くは糸状の菌糸(hyphae)から構成されている.円筒形の細胞が1 列に糸状に配列したものは糸状菌といい,カビの大部分である.糸状菌は細胞核 をもつ真核生物で,胞子の発芽管から直径5-10$ \mu$mの菌糸を発達させ,繁殖 のために胞子を形成する.菌糸は先端生長により伸長するが,環境によっては盛 んに分岐,癒合を繰り返して,菌糸細胞は組織をつくり菌核や子実体を形成する. 菌糸に隔壁があるものを純正菌類と呼び,それは子嚢菌類,担子菌類(キノコの ほとんど),不完全菌類に分類される.糸状菌はセルロース,リグニン,タンパ ク質などの高分子有機化合物を分解できるものが多く,腐植の形成や木質組織の 分解は主に糸状菌のはたらきによる.

放射菌

放射菌の名前はシャーレで培養した時に放射状のコロニーをつくることに由来し ている.様々な特徴は前述の糸状菌と次に述べる細菌の中間的な性状をしている. 糸状菌と同じように長い菌糸と胞子をもっているが,菌糸は直径0.5-1$ \mu$mと 細く,細胞核をもたない.また,細胞壁の組成がグラム陽性細菌に似ていること から,栄養体が菌糸状になるグラム陽性の細菌と考へられている.菌糸は直線状, 螺旋状,輪生状などの形態をとる.糸状菌と同じくセルロースやキチンなどの高 分子有機化合物の分解能力が高く,腐植の生成や土壌の肥沃化に貢献している. 抗生物質streptomycin(ストレプトマイシン)は放射菌の一つStreptomycesから生 成される.他にも医薬品として有効な化合物を生成するものが多いため,その分 野では研究が進んでいるが,分類学的には課題も多い.糸状菌が植物にとって病 原となることがあるのに対して放射菌はむしろ病気の蔓延を抑えるはたらきをす るものがある.なほ,土壌特有の匂ひは放射菌の代謝生成物によるところが大き い.

細菌

細菌は細胞核をもたない単細胞の原核生物で,基本形態は球状,桿状,螺旋状で, それぞれ球菌,桿菌,螺旋菌と呼ばれるが,これば系統分類とは関係がない.細 胞の大きさは球菌では0.5-1$ \mu$m, 桿菌では直径が0.5-1$ \mu$m, 長さが 3$ \mu$m程度のものが多い.螺旋菌はxxx. 細菌の重要な特徴は,無酸素状態のと ころで生きているものがいることである.無酸素でないと生きていけないものを 嫌気性細菌といひ,酸素を常に必要をするものを好気性細菌といふ.酸素が一時 的になくてもやっていけるが,継続的には必要とするものをxxx. また,高温下 で棲息する好温細菌もある.このような特徴から細菌は地球のいろいろな条件下 でも存在していると云へよう.

細菌にも胞子を形成するものがある.温度や栄養塩などの環境条件が悪くなると 胞子を形成し休眠する.そして適切な条件下で発芽して栄養細胞に戻る.桿菌や 螺旋菌には運動能力をもっているものがある.運動を担うのは鞭毛で,数本も持 つものもいる.

細菌はグラム染色法により,グラム陽性菌とグラム陰性菌にわけられる.一概に 云ふとグラム陽性菌は栄養要求が複雑で,胞子形成能力があるが運動能力はない. また,乾燥に強い.グラム陰性菌はその逆の傾向をもっている.

土壌微生物の生態

これまで述べたやうに微生物の分類方法はいろいろあるが,生存に必要なエネル ギーの獲得方法によって土壌微生物を分類することができる.この分類はもちろ ん系統分類学ではなくて,生態を理解するための分類である.

微生物は生命の維持に必要なエネルギーを光合成から得るか,(1) 光 合成微生物 光合成を行い,光から得るもの. (2) 化学合成微生物 物質 の酸化により得るもの,とに区分できる.更に,それぞれ,生体の合成に 必要な炭素を (a) 独立栄養微生物 光合成により二酸化炭素を固定して 得るもの,と(b) 従属栄養微生物 有機物をとりこんで得るもの,とに区 分できる.人間は微生物ではないが,この区分でいふともちろん,化学合成の従 属栄養生物である.


光合成独立栄養微生物

このグループは光合成を行い,二酸化炭素を固定して生体を構成する.藻類,緑 色硫黄細菌,紅色硫黄細菌などがある.このタイプは嫌気性のものが多い.好気 性のものは緑藻や藍藻などで,電子受容体はもちろん酸素である.藍藻は窒素固 定ができるのが特徴である.硫黄細菌は嫌気性で,H$ _2$Sを酸化して硫黄にする ことで生活している.


光合成従属栄養微生物

このグループも光合成を行うが,炭素は有機物を取り込んで得る.紅色非硫黄細 菌と呼ばれる光合成細菌が含まれる.水田,沼沢,湖沼などの嫌気的環境で窒素 固定を行うものが多い.電子は有機物や水素から供与され,有機物に渡される.


化学合成独立栄養微生物

このグループはNH$ _4^+$, Fe$ ^{++}$, Sなどの無機物を酸化してエネルギーを獲 得し,二酸化炭素を固定して炭素源とする.このグループのほとんどは系統分類 としては細菌である.基本的に有機物を必要とせず,無機物だけで生育できる (CO$ _2$は無機物).NH$ _4^+$, Fe$ ^{++}$, Sはそれぞれ硝化細菌,鉄細菌,硫黄 酸化細菌に酸化されて,NO$ _2^-$, Fe$ ^{3+}$, SO$ _4^{--}$となる.これらかわ かるように,このグループは無機物の化学動態に非常に重要な貢献をしている.


化学合成従属栄養微生物

このグループは他の生物,またはその遺骸の有機物からエネルギーを炭素を獲得 して生活している.放射菌,糸状菌,原生動物,細菌の多くが属する.好気性な ものは酸化の際に生じる電子を酸素に受容させるが,嫌気性なものは,電子受容 体として,NO$ _3^-$, SO$ _4^{--}$, CO$ _2$などを利用する.NO$ _3^-$は電子を 受けとるとN$ _2$となり,SO$ _4^{--}$はS$ ^{--}$, CO$ _2$はCH$ _4$になる.これ らの作用を担う微生物は,それぞれ脱窒菌,硫酸還元菌,メタン生成菌と呼ばれ, 無機物の化学動態に非常に重要な貢献をしている.

土壌動物

動物はネズミ,モグラなどの巨大動物(体長2cm以上.土壌の世界ではモグラは巨 大なのです)と,アリやダンゴムシ,ムカデなどの大形動物(体長2mm-2cm),ダ ニやトビムシなどの中形動物(体長0.2-2mm),アメーバ,鞭毛虫,線毛虫など原 生動物,ワムシなどの小形動物(体長0.2mm以下)がある.小形動物は土壌水中に 生活する.

小型土壌動物

中型土壌動物

大型土壌動物

巨大土壌動物

土壌動物の生態

土壌生成論

土壌生成因子

土壌は次のファクターによって生成が規制されると考へられている.(1)気候(温 度・水分).(2)生物(生物によるdegradation/preservation).(3)地形.(4)地質. (5)時間.(6)人間の活動.最近3000年では(6)の影響が著しいが,それらは互い に影響しあっており,全てのファクターが総合され,ひとつの生成作用をなして いる.したがって,あるファクターだけを近視眼的に分析することは土壌の理解 には多くを貢献しない.


気候

土壌の分布はしばしば気候帯とよい対応をなしている.これを土壌の水平成帯性 といひ,土壌の生成作用の多くが温度と水分といった気候的ファクターに規制さ れていることによる.土壌と気候とを対応づけやうという試みはいくつかの指数 を発明さしめた.

Lang(1920)の雨量係数(RF):年間降水量($ P$mm)と年間平均気温($ T$℃)の比.

$\displaystyle {\mathrm RF}=P/T
$

Meyer(1926)のNS係数:年間降水量($ P$ mm)と飽差($ S$ mm)との比.

$\displaystyle {\mathrm NS}=P/S
$

飽差は $ S=V(100-H)/100$で与へられる.Vは飽和水蒸気圧(mmHg),Hは年間平均相 対湿度(%)である.

Thornthwaite(1930)のPE指数とTE指数:PE指数は月ごとの降水量 ($ P(n)$)/蒸発量($ E(n)$)の比を1月から12月まで総計して10倍したもので,次式 で示される.

$\displaystyle {\mathrm PE}= 10 \sum_{n=1}^12 (P(n)/E(n)) $

TE指数は氷点以上の気温の1月から12月までの総和であって,植物にとって氷点 を越えるか越えないかは生育に大きな影響を与へることを反映した指数である.

$\displaystyle {\mathrm TE} = \sum_{n=1}^12 (T(n)-32)/4 $

ただし,計算では温度($ T(n)$)は華氏に換算する.摂氏の場合は次式となる.

$\displaystyle {\mathrm TE} = \sum_{n=1}^12 0.45 t(n) $

鴨下(1953)の雨蒸係数

$\displaystyle 雨蒸係数 = (P/T)\cdot(365 - 降水日数)
$

川喜田・吉良(1945)の暖かさの指数,寒さの指数,乾湿指数: 暖かさの指数(WI)とは一年のうちで月平均気温が5℃以上の月のみを選び,それぞ れの平均気温から5℃を減じた値の総和である:

$\displaystyle WI = \sum_{n=1}^12 (\bar{t}(n) -5) (where,~ \bar{t}(n) \geq 5 ^\circ{C})
$

ここで, $ \bar{t}(n)$はn月の平均気温である.

寒さの指数(CI)は月平均気温が5℃より低い月について月平均気温から5℃を減じた値 の総和である:

$\displaystyle CI = \sum_{n=1}^12 (\bar{t}(n) -5) (where,~ \bar{t}(n) \leq 5 ^\circ{C})
$

乾湿指数(K)は

\begin{displaymath}
K=
\begin{cases}
P/(WI+20) & (WI \leq 100), \\
2P(WI+140) & (100 < WI < 200), \\
2P'/(WI+140) & (WI \geq 200).
\end{cases}\end{displaymath}

で,定義される.ここで$ P'$は年間平均有効降水量(月降水量の計算上の上限を 400mmとした年間平均降水量.もし月降水量が400mm以上であっても400mmとして 計算する)である.

これらの指数のほとんどは降水量と蒸発量を特徴づける指数である.したがって 気候帯をまたぐ変化についてはよく指標できるが,同じ気候帯同士ではうまく比 較できない.そのため,気温のファクターを加味したTE指数などの指数も考慮す べきである.

また,降水量と蒸発量との比は重要で,降水が卓越する環境では水は下方に移動 する(洗浄型水分).逆に蒸発が卓越する環境では土壌水は上へ上へと登ってくる (浸潤型水分)ため,地下に溶けていた塩分が水分の蒸発にともなって上昇し地表 に析出することがある.


生物因子

生物は腐植の材料を提供したり風化を促進したり,逆に土壌を保護したりと非常 に重要な役割を担っている.

寒帯の針葉樹林では樹木の遺体から冷温の気候や微生物の活動で酸性のフルボ酸 が生成され,鉄やアルミナの溶脱を促進する(ポドソル化).一方,ステップ気候 のチェルノジョームや温帯の褐色森林土では植物遺体から腐植酸が生成し,これ が塩基を捕捉し溶脱を防止する.


地形因子

地形はローカルに環境を左右する大きな因子である.斜面の方位は日照に影響し, 斜面の傾斜は水分の保持や土壌浸蝕を左右する.周囲が凹地なのか尾根なのかは 水の集積に影響を与へる.

また,大局的な地形は気候にも影響を与へる.たとへば定常風(モンスーン,貿 易風)に直交すう山脈における降水量の非対称分布は,風上に湿潤気候を,風下 側に乾燥的気候をつくりだす.


地質因子

地質は母岩の分布や産状のことであるから,風化されやすさや風化生成鉱物を制 約する.たとえば頁岩は風化しやすく,また細片となりやすいが,安山岩は風化 しにくい上に,機械的風化しても礫になりやすい.花崗岩は風化されにくいが, 風化がすすむとマサ化という砂〜細礫状のボロボロした風化物となる.これらの 性状は透水性や溶脱のされやすさに影響を与へる.風化鉱物を規制する,よく知 られている例では,塩基性岩(マフィックロック,Fe, Mgに富む岩),超塩基性岩 (ウルトラマフィック)では,鉄含有量が高いので特有の土壌(蛇紋岩土壌.蛇紋 岩はウルトラマフィックな深成岩の変質岩)を形成し(したがって,特有の植生と なる.),ポドソル化しにくい.石灰岩は,多雨までいかない普通の降雨地域で は塩基の溶脱が送れ,ほかの母岩を比べて特殊な土壌(レンジナ,テラロッサ)を 形成する.火山灰は比表面が大きく,非晶質なので風化しやしため風化初期には 珪酸質な風化生成物を産するが,後期には珪酸が溶脱したため逆にアルミナに富 む風化鉱物(アロフェンなど)を産する.


時間因子

人間は自分が生きている時間以上のことを想像することがむつかしい.土壌が環 境の変化にあわせて自身を平衡状態にもっていくためにはしばしば数十回分の人 生の期間を要する.したがって,土壌は現在ある気候などの環境を反映している というより,一つ前の時代の環境を反映しているということがしばしばある.

土壌の定向進化:環境が一定であったとき(つまり,時間以外の因子 に変化がない時),土壌は環境と平衡状態になるように進化すると考へられてい る.平衡に達した時,土壌は一定の土壌相(*新設,断面形態)を示し,このよう な変化は土壌の成熟化とも云ふ.たとへば,火山灰土壌では次のような変化(土 層分化)を辿って平衡に達すると考へられている(山田, 1967),最初の100年間は C層からなり,薄いA層を伴うことがある.100-500年後はA層+C層という組合せ で,一部B層を伴う.500-1500年後はA, B, C層がひととおり揃う.1500年以降 はA, B, C層を完備し,この状態が持続する(平衡に達する)また,海岸では浜提 では海浜砂が発達しており土壌としては未分化だが,浜提の内陸側には土壌化し た昔の浜提が発達している.

土壌それ自身が主体で客体:土壌は変化の主体であると同時に土壌そ れ自身の環境でもある.どういうことかといふと,土壌は自分が変化することで 環境そのものを変化させてしまうのである.したがって上で述べたような単純な 定向進化は土壌以外の環境が一定であったとしても成りたたないことが多い.た とへば土壌中の粘土は雨の多い地域では一般には移動集積する.定向進化の考え 方では表土からどんどん粘土が失なわれる方向で進化が進んでいくことが予想さ れる.しかし実際には粘土は下層で集積するが,集積度あいがある程度になると 緻密になり,不透水層化してしまって却って粘土は移動集積しないようになる.

土壌進化を擾乱するもの:実際には土壌は一定の環境の中で定向進化 (成熟)を遂げるといふよりもダイナミックな環境変動の中でその時々の作用に従っ て発達すると考へるほうが現実に則している(定向進化の研究が現実に則してい ないから意味がないということではない.理想的=現実に則していないからこそ 理解を進める研究もある).

気候変動:土壌の発達史の中でもっとも数多く知られている環境変動の原因は気 候変動である.とりわけ第四紀には氷期/間氷期サイクルがあり,そのサイクル の中でも数百年間隔の(地質学的時間感覚では)細かな変動があった.気候変動は 高緯度地域や極域よりも中緯度地域で影響が大きい.気候変動は降水量や気温を 支配するだけでなく,水文学的条件(地下水位など)も影響を与へる.日本では段 丘の上に赤色土壌が発達していることがあるが,これらは過去の温暖期(間氷期) に生成したものと考へられている.北海道では逆に氷期に生成した構造土が発達 している.

段丘:段丘は海水準変動と構造運動の組合せで形成される.段丘になると,そこ の水柱は低下するため,水に飽和していた土壌が脱水し還元的環境から酸化的環 境に移行する.たとへばグライ化されていた土壌が酸化・乾燥する.

母材の付加:火山噴火による降灰が代表的な例である.土壌化がすすんでいたと ころに降灰により火山灰が供給され,それが母材としてあたらに土壌化のプロセ スに加はる.結果的には,未風化な基質が土壌に加はることによって土壌の成熟 が遅くなる.いいかえると若返る.日本では降灰が頻繁であって,降灰のない土 壌のほうがめづらしい.

土壌の発達史


人的因子

人間の活動により土壌生成プロセスが影響を受けることはしばしばである.小は, せっかく土壌が生成しかけた庭園をアスファルトの駐車場にしてしまうことから, 大は熱帯雨林を伐裁し大豆畑にすることまで.

.

シアリット化作用,アリット化作用.非晶質粘土生成作用,

腐植の集積,泥炭化作用

風化作用,脱塩,粘土集積,石灰化,ポドソル,脱珪酸.

風化作用

機械的風化

機械的風化の不連続性: 機械的風化産物は,大きい岩塊から順番に小さい塊に分 解していくという誤ったイメージをもたることがある.機械的風化では大きな岩 塊から,2mm以下の砂つぶに一挙に分解してしまって,中間がない,といったこ とがよくある.小出 博の指摘(1952).花崗岩は岩塊から真砂(粒径は極細礫から 砂)になる.安山岩は岩塊からなかなか破壊が進まない.頁岩は岩塊から粘土や シルトになる.中位の大きさ(中礫サイズ)の頁岩はほどんど存在しない.

化学的風化

化学ということばは音韻だけでは科学としばしば混同されるので,ここでは化学 という言葉のかわりに舎密(せいみ)といふこととする.蘭学でいふ化学である.

風化にともなって絶対量が増加する成分は,H$ _2$O(xxx要確認)とFe$ ^{3+}$である. 一般に,他の元素は 減少傾向を示し, その損失のし易さには順位がある.

順番 成分
1 Ca, Mg, Na
2 K
3 Si
4 Al, Fe

これはポリノフ(1935)による元素の地球化学的可動率の順位とよく一致している. 可動率は河川の溶解物質と地殻の平均化学組成との比に基いている.河川水は地 下水によって涵養されているので,可動率と風化による損失順位は計測方法が違 うだけである.ゆえに両者一致するのは当然といへる.

化学的風化が進行するにつれて,岩石の脱塩基・脱珪酸が起きる.有機物が反応 に参加する場合(ポドソル化作用)では珪酸よりもFe, Alの方が著しく移動する.

土壌母材の風化生成物

現地の母岩が風化して土壌化する以外にも,外来由来の異質の混入というプロセ スがある.堆積作用の一つとして理解できる.スライドや土石流堆積物,洪水堆 積物などが異質母材を供給するプロセスである.また,風成層も重要で,ローム 層中には中国のレスが多く含まれている.


風化の進行段階

(1)塩類段階:遊離の易溶性塩類.(2)炭酸塩段階:遊離の炭酸塩類,(3)飽和粘 土段階:粘土が塩基で飽和している.(4)不飽和シアリット粘土段階:粘土が塩 基不飽和である.(5) 不飽和アリット粘土段階: 1:1型粘土鉱物やR$ _2$O$ _3$鉱 物(Al$ _2$O$ _3$, Fe$ _2$O$ _3$などの二三酸化物)を主構成物としする

(1)は(2),(3)とオーバラップする.(2)は(3)とオーバラップする.塩基の主体 は(1)ではNa,(2)(3)ではCaである.粘土の珪礬比がしだいに小さくなる.粘土 鉱物も2:1から1:1側,R$ _2$O$ _3$がしだいに優勢となる.


舎密的風化(化学的風化)の進行を規定する因子

普通の化学反応と同じ.(1) 温度,温度は10$ ^\circ$C 高いと反応速度は2倍に なる.(2) 水の存在.中間反応生成物を溶解移動させるので反応速度を高める. (3) 水の浸透性.水が存在しても水より岩石のほうが圧倒的に多いかた,もし水 が移動しないと反応が平衡に達して,それ以上変化しない.反応を促進するため には水が移動して非平衡を保たなければいけない.(4) 表面積・体積比(比表面). あるブロックの体積の2/3乗が表面積であるから,ブロックが大きくなればばる ほど,相対的表面積が減ずる.逆にブロックが小さくなればなるほど,相対的表 面積が増加する.反応は表面で起こるため,小さいブロックほど反応性が高い. 粉体が反応性が高いのはこのため.(5) 鉱物それ自身の風化抵抗性(後述).


地下水位や地形と反応性

地下水位が低い時ほど舎密的風化が進行しやすい.地形的に低所に向って,風化 による溶解成分が移動するので,低い窪地は,周囲の高所より風化段階が進んで いないことが多い.古い地形面ほど風化段階が進んでいることが多い.


イソシアル線(等珪礬比)

坂本峻雄(1950):高緯度になればなるほど,低緯度で下位層にあった風化帯が上 位に出現する.逆に低緯度になればなるほど高緯度で上位になった風化帯が下位 に出現する.たとへば,寒帯のポドソルの表面にあわられるモンモリロナイト (珪礬比 4)は低緯度にむかって,出現深度が深くなり,熱帯のラテライト断面で は土壌の最下部に出現する.この断面の中部に出現するカオリナイト(珪礬比2) は温帯の土壌断面では表層に出現する.つまり温度が低いほど風化が進みにくい ことを反映している.

鉱物の風化

一般的な造岩鉱物はアルミノ珪酸塩である.アルミノ珪酸塩の粉末を水に溶かす ろ弱いアルカリ性を示す.また,長い期間,粉末を水に浸しておくとアルカリ性 となり,鉱物の塩基が溶出していることがわかる.アルミノ珪酸塩が水に浸され た時の反応は,弱酸+強塩基の加水分解に似ている(ただし反応速度は遅い).

M$ ^{n+}_x$ (Si,Al) $ _y$ O $ _z$ + $ nx$ H $ _2$O $ \rightleftarrows$ H$ _{nx}$(Si,Al)$ _y$ $ \cdot$ O $ _2$ + $ x$M + $ nx$OH


新鉱物の生成ハターン

(1) 遊離成分から水酸化物,硫酸塩,炭酸塩などとなって沈殿する場合.(2) こ れらが相互に結合して沈殿する場合,(3) もとの鉱物から結晶構造の一部または 大部分を継承する場合,がある.

(1)の例.水酸化物:ゲーサイト,ギプサイト.硫酸塩:石膏.炭酸塩:方解石, 霰石.還元雰囲気では炭酸第一鉄(菱鉄鉱,siderite).燐酸塩(藍鉄鉱, vivianite)が生成する.

(2) 粘土鉱物の生成において,粘土は層状珪酸塩だが,母岩の鉱物の雲母以外の ほとんど(長石など)は層状ではない.したがって,粘土に変化するためにはもと の鉱物の原子が一旦,遊離して再結合する必要がある.これがどうやって起きて いるのかはxx要調査.層状構造の形成についてはまづ,八面体のギプサイトやブ ルーサイトが生成し,その上に SiO$ _2$分子が付加して,四面体層と形成し, 1:1または2:1型層状構造になると考えられている.洗脱が進むにつれ,SiO$ _2$ や塩基の量が減じ,それに伴い,モンモリロナイト,イライト,カオリナイト, ギプサイトの順で生成する鉱物が変化する.

(3)の例.雲母は風化しても,もともとの構造である2:1型層状構造は変化せずに, 含水雲母鉱物を経て,バーミキュライトやモンモリロナイトに変化する.層間の 塩基Kや四面体を構成するAlは溶脱(負電荷・塩基置換能力の減少)し,層間に H$ _2$Oが侵入し,層間距離が伸びる(膨脹する).仮晶.花崗岩の蛭石(ひるいし, vermiculite)は雲母の仮晶である.


炭酸塩鉱物の風化

炭酸塩は下記のような平衡反応をとる.

CaCO$ _3$ + CO$ _2$ + H $ _2$O $ \rightleftarrows$ Ca(HCO$ _3$)$ _2$

炭酸ナトリウムの溶解度よりも炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)の溶解度 のほうが高いため,炭酸ガスが存在する時には固体だった炭酸塩は重炭酸塩となっ て溶解する.


火山ガラスの風化

火山ガラスは非晶質で多くは多孔質であるから相対的表面積が高く,急速に風化 が進みやすい.

黒曜石:黒曜石は火山ガラスの一つだが緻密で鋭利である.もともと の含水量は低い($ <$ 0.3 %)が,風化の過程で周囲から水を取り込んで水和層 (3-3.5 %)を形成する.これはもとの母材と屈折率が違うので,顕微鏡による 識別できる.この反応は水のあるなしの環境と時間の函数なので,水和層の厚さ で年代を見積ることが可能である.

パミス・スコリア:パミス(軽石)は白から淡黄,黄色,オレンヂ,赤 褐色へと変化する.コンシステンシーも,しっかりした軽石組織から,つぶすと 水が滲んでヌルヌルするものに変化する.イモゴライトも削り節状の皮膜として 産出する.スコリアの場合は,黒から黒褐色,鉄錆色,濃赤褐色に変化する.コ ンシステンシーは,粘りがなくなり脆くなる.

鉱物の化学的風化抵抗度

時間経過と鉱物の残存度の推移曲線において,もっとも風化しやすい鉱物は単調 な減少パターンを,もっとも風化しにく鉱物は単調な増加パターンを示す.この 手法で得られた舎密(化学)的風化抵抗性をマーレルの系列と云ふ.

抵抗度の低いものから,
塩基性火山ガラス$ <$橄欖石$ <$紫蘇輝石(hypersthene, Mg-Fe輝石, OPX)$ <$黒雲 母$ <$普通輝石(augite, 含Ca輝石, CPX)$ <$角閃石$ <$灰長石$ <$緑廉石$ <$亜灰長 石$ <$中性長石$ <$灰曹長石$ <$白雲母$ <$柘榴石$ <$正長石$ <$微斜長石$ <$曹長石 $ <$褐廉石$ <$ジルコン$ <$十字石$ <$金紅石$ <$電気石$ <$石英
となる.

ゴールヂッチは火成岩の造岩鉱物についてボーエンの晶出順序の後期のものほど 舎密的風化抵抗性が大きいことを指摘した.


風化抵抗性を決めているのは何か?

非晶質なもの,珪酸塩四面体の重合度が低いもの,同じ重合度でも密度の小さい ものほど,風化に弱い.

重合度の低さは,負電荷が多いということで,つまり塩基が多いことを意味する. 石英は橄欖石よりも重合度が高い.化学式は石英がSiO$ _2$で,橄欖石が M$ _2$SiO$ _4$となり,橄欖石のほうが塩基が多いことがわかる. これを利用して, ライチェの風化指数が下記のように定義される.

$\displaystyle {\rm [K{_2}O]+[Na{_2}O]+[CaO]+[MgO] - [H{_2}O]
\over
\rm [SiO{_2}] + [Al{_2}O{_3}] + [Fe{_2}O{_3}] + [CaO]+[MgO]+[Na{_2}O]+[K{_2}O]
}
\times 100
$

主要な造岩鉱物についてこの指数を計算すると,橄欖石$ >$普通輝石$ >$普通角閃 石(hornblende)$ >$黒雲母$ >$灰長石$ >$曹灰長石$ >$中性長石$ >$灰曹長石$ >$正長 石の順で値が小さくなる(風化しにくくなる).

雲母は風化にともなって,層状構造は剥離するようにdegradateすることがある. 001面が剥れていき,光学顕微鏡でみても段々,薄くなっていくのがわかる.

岩石の風化


岩石の化学的風化抵抗度

岩石の風化抵抗度はその構成要素である鉱物の抵抗度を強く反映している.弱い 順に下記のようになる:

蒸発岩(岩塩や石膏岩)$ >$凝灰岩(塩基性$ >$酸性)$ >$超塩基性岩$ >$塩基性岩$ >$ 中性岩$ >$酸性岩$ >$砂岩$ >$チャート

礫岩や泥岩,変成岩,変形岩はその産状により抵抗度は様々である.


深層風化

岩塊は密に節理や層理,断層が発達しているほど,抵抗度が弱く,マッシブであ るほど抵抗度が強い.

花崗岩はもとの組織を残したまま,鉱物粒子が分離するように風化し,特徴的な 風化帯を示す.この風化帯は真砂(マサ)といい,厚いものは数十mの風化帯とな る.

花崗岩の風化

斜長石 $ >$ イライト \dag
  $ >$ ギプサイト,カオリナイト(ハロイサイト) \ddag
角閃石 $ >$ そのまま \dag
  $ >$ クロウライト,バーミライト,不規則混合層,酸化鉄 \ddag
黒雲母 $ >$ クロウライト(Cr),木屑石 \dag
  $ >$ 鋭錐石,酸化鉄 \ddag
  $ >$(およびCrから)含水黒雲母(AqBt) 3,8面体Al-バーミキュライト(Vm) \ddag
    -(AqBt & Vmより)-$ >$ カオリナイト鉱物 \ddag
    -(AqBt & Vmより)-$ >$ ギプサイト \ddag

\dagは岩塊内での反応.\ddagは機械的風化により粗鬆となった風化帯での反応

風化帯の厚い地域はおもに,隆起準平原に限られる.隆起準平原は平原状に発達 する定高性のある丘陵である.その地形的特徴から長い間にわたって地表に晒さ れ,侵食されてきたことが示唆される.また風化帯の下限は,ローカルな侵食基 準面よりも下らないことから,風化帯の生成には,地表からの作用が強いと推測 される.


クサリ礫

段丘のうち,高位段丘つまり古い段丘を構成する礫は実にクサって(腐朽し)おり, 子供の空手チョップでも破断できるぐらい脆くなっていることが多い.これらの 礫はほとんどが陸成層で,未固結で,地下水位がかなり下にあること(排水がよ く通気性もよい)ことから,陸上に長く置かれた結果,礫はクサってしまったと いう推論ができる.メカニズムはよくわかっていないが,微生物の作用も無視で きない.逆に,海成層の礫層はだいたいにおいて保存がよく, 日本でも白亜紀の礫がクサっていない例がある.


赤色風化殻

段丘の古い地形面上に風化して赤色になった部分が認められる.それは完全に土 壌化しているものもあれば,まだ母岩の組織が保存されているものまで様々であ る. これは温暖期に生成したと考えられている.

粘土の風化


粘土鉱物の風化系列

風化系列は環境と母岩に依存する.温暖多雨地域ではバーミキュライト,モンモ リロナイトがクローライト化(層間にハイドロキシアルミニウム重合体を形成)し たり,カオリナイトやギプサイトに変化していくことが多い.


酸化還元

還元的環境で堆積し,そのままでいると青灰色粘土となる.これは酸化的環境下 では急速に変色し,青$ >$$ >$$ >$茶褐色となる.空隙や物性境界(砂泥境界, 生痕)では酸化鉄が沈殿する.パイプ状になったものが高師小僧といい,板状の ものを盤層という.海成層の場合は硫化鉄の酸化によっ,硫酸根が生成し,カル シウムを結合して石膏が析出したらい,ジャローサイトなどを生じる. 乾いた露頭では粉を吹いているのが特徴で,間隙水はしばしば硫酸酸性となる. 湖成層の場合は藍鉄鉱,菱鉄鉱が沈殿することがある.

土壌分類

方法論.分類とは

日本の土壌分類

成帯分類

アメリカの分類

lFAO/Unesco土壌図の分類

土と文明

土というのは地球の上澄みといってもよいリソスフェアの,これまた上澄みの大 陸地殻のせいぜい1mほどの領域を指す.このたかだか1mの土をほじくりかえして, 人類は生活の糧を得てきた.生活だけではない,人類は土を耕して (aguriculture),文化(culture)文明を育んできた.

灌漑土壌

土壌侵食

塩害

沙漠化

酸性雨と土壌の酸性化

持続可能な焼き畑と一線を越えた焼き畑

資源としての土壌

未整理分


土色

土の色は土壌の構成物質とその状態によって決定されるので,逆に土色で土壌を 成因や状態を推測することができる.たとへば,青緑色の土色は鉄の2価のイオ ンに起因し,その土壌が還元雰囲気にあることを示す.また,土色はその特徴ゆ ゑに土壌のタイプ名としてもよく用いられる.赤色土,褐色森林土.黒土(チェ ルノジョーム)等である.

土の色を決定する要素

色相

ヘマタイト Fe$ _2$O$ _3$
$ ...$ フェリハイドライト Fe$ _2$O$ _3{\cdot}$H$ _2$O
ゲーサイト FeOOH
第一鉄イオン Fe$ ^{+2}$

明度

明(白) 粘土鉱物
暗(黒) 腐植

土色 主成分
炭素分10%以上. 火山灰土のA層,黒泥層
  縮重合の進んだ腐植  
黒褐 炭素分 数% 火山灰土のA層,擬似グライ層
暗褐 炭素分 数% 褐色森林土のA層.
  含水酸化鉄 火山灰土のA$ _3\cdot$B$ _1$層.
含水酸化鉄 火山灰土のB$ _3\cdot$BC層.
    褐色森林土のB層.
    ポドソルのB層.
黄褐・黄 含水酸化鉄 火山灰土のB$ \cdot$C層.
    排水不良土層の斑紋.
    黄褐色森林土・黄色土のB層.
ヘマタイト 赤色土のB層
  含水酸化鉄  
酸化鉄poor 水田土壌の還元層
    ポドソルのB層
青灰・緑灰 遊離鉄(I) 腐植質のグライ層
暗紫 腐植に補足された鉄(I) 腐植質のグライ層
焦茶 水酸化マンガン 水酸化マンダンの斑紋・結核盤層

土色はマンセル法によって記述する.マンセル法は色を色相(hue)・明度(value)・彩度(chroma)によって区分する方法である.色相は色相環といふように円形になる. 黄色は5Y,赤は5R,紫は5P,青は5B,緑は5Gのように示す.明度は完全な黒を0,完全な白を10とした時の色のもつ明るさで示す.彩度は無彩色(白,黒,灰色)を0とし,もっとも鮮やさな赤や緑や青を10とした時の鮮やかさで示す.この方法で示すと,たとえば7.5YR6/5, 2.5YR5/6のようになる.

計測には機器も用いられるがその場合はL*a*b法で出力されることが多い.一般 には標準土色表と対照して,近い色のコードを記載する.問題は土壌は水分の多 寡によって色が違って見えることがある.したがって土壌断面等で,しばらく乾 燥させてしまったものは本来の色ではなくなるので注意が必要である.


土性

土性とは粒径に基づく土壌区分である.これは風化の程度や溶脱・集積作用,母 材を判定するのに役立つ.たとへば風化作用だけが機能する土壌では,土性は上 方細粒化を示す筈である.また風化の程度が進むほど,上位と下位の粒度に違い がなくなり,全体に細かくなる筈である.層位の中部において突然,粒径が大き くなっているようなことがあれば,そこは外部から母材が堆積したのか,レシバー ジュが起きた可能性が考へられる.

粒径 農学における土壌の粒径区分は地質学のそれと細部において異 なっている.農学系の区分にもいろいろあるが基本的には10進法であり,2進法の地質学とは数学的法が異なっている.

区分 農学会 US農務省 国際土壌学会 地質学
礫/砂 2.0mm 2.0mm 2.0mm 2.0mm
粗砂/中砂 中砂なし 0.5mm 0.6mm  
中砂/細砂 0.25mm 0.25mm 0.2mm  
細砂/シルト 0.05mm 0.005mm 0.02mm  
シルト/粘土 0.01mm 0.002mm 0.002mm  

イメージとしては礫はガスタンク,粗粒砂はトラックのタイヤ,細粒砂はソフト ボール,シルトはパチンコ玉,粘土(クレイ)は米粒の相対的大小関係がある.

直感的な土性区分

土性 含粘土率 直観・経験的記述 透水性 通気性 保水力 粘着性
砂土S 12.5$ --$ 砂だけ.粘らない.
砂壌土 SL 12.5-25.0 ほとんど砂だが僅かに粘る.        
壌土 L 25.0-37.5 泥質砂. $ \updownarrow$ $ \updownarrow$ $ \updownarrow$ $ \updownarrow$
埴壌土 CL 37.5-50.0 砂質泥.        
埴土 C 50.0$ ++$ 淘汰の悪い泥.
S:Sand, L:Loam, C:Clay

保水力はイオン態の栄養塩の保持力と高い相関がある.また,これ以外にもシル トを別に考えて区分する方法(例.シルト質壌土)もある.

  

ハルマッタン.サハラから大西洋に向う風塵で,沿岸地域の作物と 海洋の生物生産を支える.

土壌の水は高いCO$ _2$分圧は.通常の水の10倍〜4000倍.

日本では土壌の生育よりも植生の発達のほうが早い.青木ヶ原も土壌は未熟. 土壌の平衡は数千年から数万年を要す.

鹿沼土 pumice 粘りが少なく粗粒.水はけがよい.これに石灰をまぜると酸性が 中和され,pHが上り,負の変異電荷が多くなる.

MOH + OH$ ^-$ $ \rightleftarrows$ MO$ ^-$ + H$ _2$O

カチオンをたくさん保持できる.またCO$ ^{2-}$があるので,アニオン (NO$ _3^-$等)も保持できる.

栄養塩の移動:

カリ肥料のKは粘土鉱物中に吸着され,かりにCaが放出されるため,土壌溶液濃 度は低いまま.窒素については動態が異なる.窒素肥料のアンモニウムイオンは 粘土に吸着されるが,硝酸に酸化される.これは土壌の負電荷に排除されるため, Nは土壌溶液中に溶存する.燐酸はCa, Alと難溶性の塩をつくるので,土壌溶液 中では低濃度となる.但し,燐溶解菌とVA菌根菌がいるときは動態が異なる.燐 溶解菌は燐酸化合物をイオン化することができる.VA菌根菌は根に共生して菌糸 を延して遠くの燐を根まで運ぶ.

土壌の豊かな生態系は土壌の不均質性に由来.すこし離れただけで環境や化学組 成が異なる.1cm隔てて,好気性細菌と嫌気性細菌が共存していることもしばし ば.団粒の仕切り.棲み分け.

水田は還元的.燐酸鉄から鉄と燐酸が遊離(燐の溶出).これは湖沼では富栄養化 に寄与していて,やっかいなものとされるが,水田では稲の肥料をなって好都合. 稲は還元的でも窒息しないが,雑草は抑制される.

水田は沼地なので土壌が肥沃になる.

土壌の塩害は逆説的だが大量の水による.大量の水により地下水面と表層水が毛 細管でつながり,蒸発にともなって下位層の塩が上位に登って,表層で析出する.

八郎潟の干拓

秋田県秋田市の北方20kmの海跡湖であった.東西13km, 南北27km,面積220km$ ^2$ の琵琶湖に次ぐ湖沼であった.1957年に国家事業として着工.1966年に全面乾陸 化が完了した.

八郎潟の湖底堆積物 いわゆるヘドロで,粘土分と50が小さく,含水量が高いのが特徴.内湾や湖沼の堆積物としては普通であるが, 土壌としては珍しい.土壌としては排水性の悪さと地盤の支持力の低さと相俟っ て,不良土壌である.干拓の目的は農耕地であり,この不良土壌を改良すること が求められた.

不良土壌の改良: ヘドロを乾燥させる.そのためには地下水の排水.暗渠を埋 設し,地下の間隙水を暗渠に流入させて排水路に誘導する. ヨシ,ヒメガマ,ケイヌビエ,オオイヌダテ,ユゾウキャなどの植物を植ゑ,蒸 散による乾燥.

乾陸化直後のヘドロの土壌構造は壁状構造で,土が団粒とならず,均質につまっ た無構造であった.その後の乾燥収縮で鉛直方向に亀裂がはいる柱状構造になり, その後亀裂は水平方向にも発達し,ブロック状の角塊状構造となる.更に動植物 の作用により団粒が生成する.仮比重もだんだん増加し,乾陸化後は 0.3-0.4g/cm$ ^3$だったが,10年後には0.7g/cm$ ^3$(表層下20cm)となった.

熱帯雨林の破壊

ラテライト性土壌は熱帯特有の著しい風化作用の産物である.時には層厚10mも の赤色の土層が発達する.腐植の発達は貧弱で,熱帯の高温多湿のため有機物の 分解が著しい.2年で有機物は全部交替してしまうと云はれる.鉱物の溶脱も著 しく,塩基だけでなく,珪酸さえも溶脱してしまう.そのため土壌は鉄とアルミ ナに富むようになる.これらの水酸化物の結晶化がすすむとカオリンが形成され る.カオリン土壌はボロボロと粘着力がなく,乾燥するととても堅い層となる.

以上のように,熱帯の土壌は養分に乏しく,堅い層を形成するために植物にとっ ては根も通しにくい痩せた土壌である.ここで疑問が生じる.痩せた土壌にどう して熱帯雨林は発達するのであらうか.それは熱帯雨林の膨大な一次生産.主に リターによって土壌に継続的に大量の有機物が補給され,土壌の肥沃性をからう じて維持している.いってみれば熱帯雨林は自転車操業なのだ. 同時に,熱帯雨林は閉鎖的で循環の早い生態系であることを意味している. 熱帯雨林は一度破壊されると土壌の養分の流出と,それにともなう土壌侵食によ って加速的に森林は崩壊していく.

熱帯雨林が消失した地域ではラテライト土壌が直接露出する.熱帯の強い溶脱作 用で珪酸が溶脱されるとラテライト土壌からラテライトロックという赤く堅い石 (ボーキサイトの仲間)に変質する.こうなってしまうと地質学的時間をかけて気 候変動等の(再)土壌化に有利な条件がそろわない熱帯雨林は回復しない可能性が 高い.

検土杖(けんどじょう),ボーリングステッキ

Roger Revelle(1976)42億ヘクタールの農地を最大限の生産性で活用すれば400億 人やしなえる.吉良竜夫(1970)も同様に438億人と試算.これが地上における人 口の最大値と考えられる.ちなみに2030年には燐酸肥料の原料となる鉱石が不足 するという予測がある.400億人達成の前に最大限に生産性自体がなりたたない.

あとがき

地質学の大きな役割のひとつは,``これまで生きてきた生物はほとんどが絶滅し てきたし,私もあなたも人類もいずれ死ぬだろう.この世の全ては変化してきた し,これからもまた変化していくだろう''ということを伝へることにある.思へ らく,己が死すべきものだということを忘れた/知らない/認めたくないものは爭 い,あるいは変化したくない/させたくない/認めたくないものは不幸を患う.

土壌というのは一見丈夫不変にみえて実際は,様々な地質現象と同じく,うつろ いゆくものである.たしかに土は強い.母なる大地というのは古人の徒なる空想 の産物ではなくて実在の作用の詩的表現である.しかし同時に土はもろい.ふと したことで土の強さは失なはれ,地質学的時間をかけて成熟したものが人の不心 得で一瞬のうちに灰塵に帰す.もちろん,土(humus)は灰塵(dust)ではない.こ の土の強さともろさは地球のどこでも通づる本質である.地質学はこれまで長い 風雪に耐へてきたものを調べる傾向があった.それは地質学的証拠とは長い風雪 に耐へてきたものだからである.もちろんそれにより理解は進んだ.しかし,こ こで土壌学を学ぶことで,強くてもろい地球のありようについての一層の理解が 進むことを私は祈念する.科学というのは本来,自然の摂理を学ぶものであって, 土壌を学ぶとこれまでの人が土壌に対してなしてきたことは必ずしも土壌の摂理 にかなったものばかりではなかったし,結果,人間にも悪いことをもたらすこと もあったことがわかる.我々は学ぶことで自然への畏敬の念を新たにする.

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地質學者のための土壤學覺書[執筆中]
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auf Pedologie für Geologe)
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...なお,壌1
壌は繁体字で壤と書く.
... 混ぜ込んで醸す2
訓「カモす」
... 久粘土の粘土は粘着性が大きく3
荷電のせいもあるし,格子置換しやす い2:1型は全体に帯電しやすく,からまりやすい.

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