ベルクハンの三部作 嫌なものは嫌ときっぱり伝える対話術 アタマにくる一言へのとっさの対応術 グサリとくる一言をはね返す心の護身術 から抜粋した. #1#################################################################### 嫌なものは嫌ときっぱり伝える対話術 ベルクハン,バルバラ著 瀬野文教訳 草思社 2001(Deutsche 1995) ISBN:4794210477 Die Etwas Gelassenere Art, Sich Burchzesetzen Barbara Berckhan K\"osel-Verlag GmbH & Co., M\"unchen ###################################################################### 他人を良好な関係を築くには争いを避けるのではなく,人と正面から向きある だけの力量を心構へが必要. 問題解決の最大の障碍は自分は正しいと思うことだ.自分が正しいと思ってい ると人はお説教をはじめる.その場合,その人に欠落しているのは,人間とい ふものは自分の意志に反して自分を変えたり,説得されたりはしないというこ とだ.それどころか他人にあれこれ説教されるほど,却って反発して逆らはう とするものだ. 争いは全ての因果関係が明らかにならないうちは解決されない.つまり具体的 には全当事者たちあが自分の思いを云ひつくしてしまうまでは無理に解決策を さがしてはいけないといふこと. 自信や自尊心は他人の言動に依存しているように見えるが実はさうではない. 実際は私達自身によって規定されるものであう.このことを忘れないことが大 事. 人の頼みを断わりなさい.他人の問題に自分の責任があるなんて思う必要はな い. すぐに本題に入れ. 長々を弁解などするな. いつばん肝心なことを単刀直入に話せ. いつもゆったりと落ち着いて機転を效かせる. はっきりと要求を口にするが,それで変に卑屈になったり猛々しくなったりしない. 勇気を出すには (1) これまでに多くの困難を乗り越えてきたことを思い出しませう. (2) 自信はある,といふことを知りませう. (3) その自信を仕草や振舞に移しかえてみやう. (4) リラックス (5) その自信を「心のカメラ」にしっかりと写し,「心のメモ」にはっきり記しませう. はっきりと要求を伝へるには (1) 要求が正当であって,不足ないと納得する. (2) 目的第一主義の私で臨む. (3) 簡潔にストレートに要求を話す.だらだらまわりくどい云ひ方をしない. 丁寧ではっきりした口調で,ごく当たり前のことを口にしているかのやうに切 り出す. (4) 必要なら理由を説明する.その際も自己弁護はしない. (5) 卑下したり,媚びたりしない.弁解もしない. (6) 相手にノーといふ権利を認める. (7) 一度や二度ではあきらめず,ねばり強く喰らいついていくこと. 頑固になるためのABC---頑固の小槌 A 相手の云ったことを復唱する. B それに続けてすかさず自分の願いや要求をつきつける. C 要求や願いの理由を説明する. *下手に字句内容を変へない.要求がだんだん遠慮がちになる.不動の要求を守り抜く. *売り言葉に買い言葉のやうな言い争いに巻き込まれない.相手の云ったこ とに構ってやる必要はない. *相手の議論にはまると話題がそれてしまう.本来の目的が見失はれてしまう. *点滴 石をも穿つ. (1) 要求をひとことで云へるように. (2) 背筋をひしっと伸ばす. (3) 力まず,さわやかに要求や願いを云ふ. 頑固の小槌の核心は単純さと落着きにある.一番大切なのは,たくさんの洗練 された説明を駆使して相手を説き伏せることではなく,ねばり強く要求を繰り 返すことになる.理由は3つか4つあれば十分.「ただそうしたい」,でもよい. 相手との関係悪化にどれくらい耐へられるか.それを試すのも一興です.相手 との関係悪化を楽しむつもりで相手がいらだったり,怒ったりしても平気な自 分を鍛えあげてください. 「また別の機会に」と逃げるのに取り合はず,具体的な約束,つまり次の期日 をとりつけることが重要です.この問題がまだ解決づみではないことを示すの です. 罪悪感のあまりに自分を責めるのはやめませう.そんなことをしてもあなたが いい人間になるわけではなありません. 批判に対して (1) 挑戦しない人は批判もされない. (2) 批判は他人の存在を示す. (3) どの批判を採用するかは自分が決める. 自分の人生を望むように生きるために優先させる権利を有する. #2#################################################################### アタマにくる一言へのとっさの対応術 ベルクハン,バルバラ著 瀬野文教訳 草思社 2000(Deutsche 1998) ISBN:4794209800 Die Etwas Intelligenrere Art, Sich Gegen Dumme Spr\"uche Zu Wehren Barbara Berckhan K\"osel-Verlag GmbH & Co., M\"unchen ###################################################################### {1} 他人の気分に左右されない自分になる. 「相手が無礼だから私もそうするだけ」これはつきつめると,いつでも相手の 気分に引きずりこまれる可能性があるということです.つまり,相手が不愉快 ならば自分も不愉快にさせられてしまうといふことです.れども相手の攻撃に 対して効果的に身を守りたいと考えるならば,上のような態度は直さなければ いけない. 自己防御は「独立宣言」で始まります.「他人の気分に左右されない私」とい うことです.「人が私どどう扱うか」といふことにあなたの気分や感情が左右 されているとしたら,あなたは釣り針にかかった魚と同じです. バリア(防御楯)つくりのプロセス 1 まわりがどんなに興奮して騒いでいても,あなただけは冷静で落ち着いてい る,そんな状況を思い描いてみてください. 2 あなたのまわりに目に見えないバリアを築きあげて,なにが來ても大丈夫と いう気持ちを大きくふくらましてください. 3 あなたの目の前に透明なバリアを思い描いてください. 4 あなたのバリアにぴったしのテーマ音楽,もしくはキャッチフレーズを考へ てください.「今の私には関係ない」とか「それは私のことではない」とか 「別の人にまかせておけ」 心のバリアで防御しておけば,いともたやすくねばり強く冷静な交渉ができる. 交渉の前にはかならず心のバリアを自分の目の前に築きあげる. 不愉快な人々と接触しなければいけない職業にはすべてある種の衝突防止壁の やうなものが必要.けれども,自分の創造力で全身全霊でものごとに打ち込ん でいる人たち,学者や芸術家も,世知辛い世の中を渡っていくにはしっかりし た楯が必要です. {2} どうしたら堂々と話せるか あなたがくじけて小さくなっていれば,相手はここぞとばかりにあなたの感情 に土足で踏み込んでくるでせう.子羊みたいにしていれば獰猛なオオカミが寄っ てきます. 攻撃する側は自信のなさそうな人を狙うのです.それはなるべく戦わずに,つ まり自分が傷つくことなしに獲物を得たいと思っているからです. 「パワーの空白状態」獲物になりやすい人から発せられる独特の信号. 身をかがめ背中を丸めて道を歩いている人 いつもしょぼくれて小さくなっている人 背筋がしゃんと伸びていない人.胸郭がいくぶん窪んでいる人. 肩をすくめるクセのある人 目があると,おびえたように視線をそらす人 相手に媚びるように,いつも微少している人 立っている時も座っている時もあまり場所をとらない人 パワーの空白状態にある人は必要以上にまわりに合せやうとして,自分の権利 をなるべく主張しないようにしています. 限度を設定して,ここから先はいけませんよ,と釘を刺すことが苦手です. 争いを避けやうとします. すぐに他人に迎合して自分本来の目的から逸れてしまいます. 親切で感じのいい人だと思はれやうと努めます. 自分の意志を押し通したり拒絶してしまった後で,すぐに良心の苛責を覚えます. 傍若無人な人たちや暴力的な人たちとキッパリ縁を切れません. 言葉づかいにおいてもすぐに何度も謝る傾向がある. 自分を低く見て卑下する傾向がある. パワーの空白状態にある人は生まれつきさうなのではなく,そのやうに育てら れてしまったのです. 攻撃する側も知らず知らずのうちに相手の反応に左右されています...ある 人は相手の不愉快な言動を想定して,それに適った応答を紙に書いてハンドバッ クに入れておきました....今度こそ撃退してみせるわ,という確固たる決 意,そしてよい解決方法を見つけれ,あとは試すだけだとふ待ち遠しさ,こう したことが全てパワーとなって彼女の全身からふれ出ていたのです....翌 朝,例の同僚に彼女のほうから「おはやう」と声をかけ,いつもの嫌がらせを 待ちました.ところが相手は黙ったままなのです.相手は,これまでの獲物に まったく見られなかった自信に満ちた毅然とした一面をすぐに嗅ぎつけたので す.今度は自分が不愉快な思いをするに違いないと悟ったのです...「こん にちは」の一言で相手を威嚇する響きが生まれます. 「もう負けないぞ」いつでも来い,とふ気構えが相手を怯ませ,戦わずして相 手を退散させてしまうのです. いったい何があなたのパワーに歯止めをかけているのかを観察してください. 弱い立場に自分を追い込んでいるのは他でもないあなた自信なのだ,と気がつ いたら,あなたはもうほとんど勝利を得たも同然です. パワーを取り戻す簡単な方法. ・わざわざ小さく見せる必要はありません. ・相手の目を落ち着いた眼差しでじっと見つめてください.とくに状況がトゲト ゲしく不快なものになってきた時に. ・卑屈な愛想笑いなど決してしないこと.媚びへつらうような微少などしない. ・相手がバカにしたりダシに冗談を云っている時,決して笑顔を見せない.あ なたの名誉が傷つけられる度に,あなたの人格は下るのです. ・自分を嘲ってはいけない.歓心や同情を得ようと欠点を吹聴するな. ・好悪や善悪,是非の判断をはっきりと.だらだら弁解しない. ・哀願調になるな.たとへ相手があなたの主張に耳を傾けなくても断固として 何度でもただただ主張を繰り返すのです. ・名誉と尊重は相手だけの特権ではない.あなたが扱われたのと同様に相手も 扱ってあげませう. {3} 侮辱を受けた時の応急手当 侮辱を受けた時:はじめに不意打ちを喰らい,その後なす術を知らず無力感に 教われる−すっかり相手のペースに翻弄されています.しかし,それがパワー を失なわせるものなのです.その呪縛を断ち切るには,相手に注意を向けない こと.大切なのは敵ではなく,あなた自身.まずはじめにあなた自身の気分が 少しでもよくなるように努めてください,今すぐにです. 侮辱されたらすぐにすること. ・深呼吸する.息を富めていると脳に酸素がいきません ・距離を置く.立ちあがってしまっても結構です. ・無理をしない.カウンターパンチをかえしたいと思うかもしれないが, それは高望み.一発逆転という大それた望みはここではねじ伏せてください. ・間をとれ.攻撃側は必ず,自分の攻撃がうまくいったかどうか確かめたがり ます.あなたの反応を待っているのです.ですから,間をとって,相手をほっ たらかしにしておくのです.相手には明日返事するとかあるいは来週の水曜日 の何時にお答えしまうとでも云っておけばよいのです. ・できるだけいいかげんに.相手の攻撃はほとんど全てが馬鹿げた,厚かまし い,無礼なものです.そういうものにマトモに答える必要はないのです.知性 や感情,注意力といったエネルギーをそんな無駄なことに使うな.省エネな対 応でよい. ・心の真ん中に戻れ.侮辱されると多くの人達は口をパクパクさせて空気を吸 い込みます.それでよいのです.大事なのは心の真ん中に戻ることです.心の 真ん中とはそれを起点にして,冷静に集中力をもって物事にあたることのでき る場所です. このような応急手当は時間がかかりすぎるのではないか,と思うかもしれない. そんな悠長なことをしているうちに相手はかなたに消え去っているに違いない, と.そんな心配はいりません.攻撃した側はたいてい,自分が落した爆弾の威 力を確認したがります. 損得だけ考えるとプレッシャーはなくなる. ストレスに対して...闘争本能もしくは逃亡本能が呼び起こされます... それは異常な筋肉の力を必要とします....この筋肉運動に不必要なすべて の思考機能が道を閉さされてしまうのす.問題を解決して道を開いてくれる創 造的な思考力も道を閉ざされてしまいます. 思慮を欠いた浅薄な口答へは味方のゴールにボールを蹴り込むようなものです ぐに自滅してしまいます. 相手からやりこめられた時に効果的に自分を守るには,まず第一にあなた自身 の利害得失を考へることです.いちばん大事なのことは,なにがあなたにとっ てベストであるか,重要であるかとふことです.相手があなたの反応に対して どう思っているかなど,どうでもいいのす. 大事なことはあなたが敵の攻撃に対してどう反応するか,いざといふとき明確 な意志決定ができるかということです. {4} 相手を空回りさせるには 相手に逆らうのをやめてしまえば,そこから無限の行動の可能性が生まれてき ます. 相手が嫌な言葉をかけてくる目的は大抵ただ一つ,あなたを挑発しやうとして いるのです. 嫌がらせにケリをつけるもっとも有効な方法は,相手の挑発に乗らないこと. 無視してしまうことです. 相手を空まわりさせる3つの戦略.1) なにも云はずに黙って行う法.2) 相手 の矛先をかわす法.3) ひとこと投げ返す法. 戦わずして自分を守る戦略の利点は,自分の作業や計画を中断しなくてすむこ とです.簡単にいふと邪魔されずに済みます.もうひとつの利点は,感情の波 風が立つのを未然に防いだわけです.人間環境の感情汚染防止に一役買うこと になります. 相手の攻撃を無視するのがむつかしい場合は,ちょっとした身振りで反応しま せう. 1) 相手があなたに不愉快な言葉を発したら,目をかつと大きくむいて相手を じつと睨みつけください.まるで奇妙な化け物にでも遭遇したかのやうに.た だし言葉を発してはいけません. 2) 昔からの知人にでも会ったかのやうに親しみをこめた目差しで相手にうな ずきかけてください. 3) しばらく間をおいてから,ものめづらしさうにじろじろ相手を観察してくだ さい.まるで宇宙人でも見るようにして. 4) してやったりとばかりに一人でほくそ笑むでください. 5) 黙った手帳をとりだし,相手がいま云った不愉快な言動を書きとめてくだ さい. 6) 深呼吸の練習をしてください.わざと聞こえるように. 相手がいぶかしんでも相手の身振りに説明を加へないこと. 変に思ふ時は聞きながしてしまへばいいのです.家に帰ってから,あれは一体 だういふ意味だったのだらうかなどとあれこれ思ひ返す必要はありません... 考えれば考えるほど全ては不愉快になるばかりです. 相手からの攻撃を受けたのに黙っているのは,あなたが負けたといふことでは なくて,むしろあなたが平静でいることのなによりの証拠だ. {5} 相手の攻撃をはぐらかすには. 無視がうまくいかない場合は,あったりとはぐらかしてしまうのです.別の話 題を切り出してください...自己弁護したり言ひ訳したり逆に反論したりす る必要はありません.話の方向を変へるだけでいいのです. なんのことわりもなしに,あっさりと話題を変へてしまうこと. 誰かに話題を強勢できる人はいません.他人が突き出した話のタネに一生懸命 くらいつく必要はまったくないのです. 相手がしつこくいやみを繰り返したならばだうでせう.さういふ場合は あな たも同じやうにしつこくはぐらかしを続ければいいのです. 「話をそらさずに,聞いたことに答へなさいよ」たしかにあなたは話題を変へ ました.でもそれを弁解する必要はありません...「ええ,変へましたよ. それが何か?」 もしも,相手が話題をそらしたことを非難したら,それはあなたが期待どおり の反応をしなかった証拠です. 礼儀正しい人というのは...無礼な者に対しても丁寧な態度をあっさり捨て てしまうことができないのです.自分がバカにされているのに,相手のうしろ からノコノコついていく始末です. もし,あなたがこような丁寧で礼儀正しい人だとしたら,今こそ,あなたの強 さをはっきり知らせるよい機会です.相手と同じやうに あなたにも自分の考 へを述べる自由があるのです. 相手の言葉に耳を傾むけなればならないなどといふ決まりは世界中のどこにも ありません.また,無礼な相手に対しても丁寧な態度で接しなければならない といふバカげた決まりもありません. 理不尽なこと全てにいちいち腹を立てていたら,世界中のあらゆる出来事があ なたを混乱の渦に巻き込んでしまうでせう...「犬は吠えてもキャラバンは 知らぬ顔で過ぎてゆく」あなたは我が道を行けばよいのです. {6} ひとことで嫌な相手を追っ払うには... タイミングよくカウンターパンチのひとことを浴せたいと思ふでせう...ト レンディードラマや映画の当意即妙な受け答へに影響されています...けれ どもこれは優秀なシナリオライターが...徹夜までしてやっと書きあげた台 本なんです...俳優ならセリフにつまっても...撮り直してもらへます. でも私達はいつも``野ざらしのライブステージ''に立たされているのです. 答へは一言で十分です. 「それがなにか」「ほほう」「へー」「あらさう」「お・き・の・ど・く・さ ・ま」「云ふじやないの」「あらら」 これは次の場合に特に効果的です.無駄なエネルギーを使いたくない場合,重 要人物で争いを避けたい場合,相手のつまらないたくらみにかかわりにあって いる暇などない場合,返す言葉がみつからず,一喝して追い払いたい場合.あ とで考へたい場合, 相手の考へをかへてまったうな人間に教育しなおしてやらうなどと考へてもい けません.人間といふのは自分の意志に反して動かされる動物ではないからで す. 人間といふのは他人から無理に強いられると反抗したくなる性質をもっていま す. もし相手を教育してやらうとすれば,相手は反抗して予想以上に激しく戦いを 挑んでくるかもしれません.そうなるとあなたのほうに大きな変化が起こりま す.しだいしだいに相手のほうに注意が集中し...相手のとる態度...を 細かに観察するやうになります...あなたの神経はますます相手に引きよせ られていきます...つい今しがた相手が発した不愉快な言動があなたの頭の 中をぐるぐるを回り...要するに,ちょうど太陽のまわりを回る惑星のやう に相手を軸にしてぐるぐると振り回されているだけなのです.相手を変へやう とすればするほど,あなたはますます敵にしばりつけられていきます. 相手の呪縛から逃れることです.堂々めぐりの回廊から離れることです.敵を なすがまま放っておくことです. {7} こうすれば相手はあなたが読めなくなる. さし迫った状況の中で自分の身を守るにいちばん大切なことは,自分をどれだ け愛せるか,自分がどれだけ大切かといふことです.それは云ひ換へると敵の 目の前で堂々と鼻くそをほじるやうなものです. 攻撃側は無意識にせよ,相手にどのやうなダメージを与へるか前もってイメー ジを描いています. 敵をよろこばせるのはやめにしませう.これからはもう少し敵にあなたが読め ないやうにしませう. コミュニケーションがなりたつのは話す言葉にちゃんとした意味があるからで す...だから,脳は懸命に相手の言葉の意味をさぐります...これを逆手 にとって,..何に意味もないことを云ってみるのです.たとえば,相手の攻 撃に対してことわざで返すのです.けれどもそれは相手の攻撃とまったくなん の関係もないことわざでなければなりません. 卑劣な相手に真正面から答へる必要はありません. 機知に富んだ答へで相手をびっくりさせてやらうなどと意気込むとかえってそ のことに囚われて,がんじがらめになってしまいます. {8} 根拠のない批判を撃退するには 不当とは,その批判に軽蔑が込められている場合をいいます. 批判が感情的になるのは...批判する側に心のゆとりが備はっていないから なのです.むきになって人を批判するのは,批判する本人の身辺がうまくいっ てなくて,そのことに腹を立てたり失望してしまっている場合が多いのです. こういう人たちは自分自身に対して否定的,後向きになってしまっているので, それが自ずと口調や言葉の選び方に表れるのです. 別の原因もあります...あらかじめなんの考へもなく,ただ感情にまかせて 批判するといふ場合です.そういう人はただ出まかせにしゃべっているだけで, 思いついたことをそのまま口に出してしまうのです.{さういふ人に限って, 口に出す前によく考えろといったりする} 要は,毒のある言葉を寄せつけないようにすればよいのです...手っとり早 いのは毒のある言葉をそっくりそのまま質問にして相手に投げ返してやること です.つまり,あなたを傷つけた言葉そのものを問題にするのです...「退 屈とはなにを指してそう云ふのですか?」「新鮮味がないとは,だういふ意味 ですか?」..今度は攻撃側が自分の正当性を明らかにする立場に追い込まれ ます.相手は自分の云った言葉を説明しなければなりません.このように逆に 質問することで...二つの優位が生まれます...ゆとり...相手が反対 に切羽つまった状況に追い込まれつつある...ちゃんとした根拠があるのは, それとも単なる意地悪なのか.ここではっきりわかるのです. 「あなたは反対するばかりでひとつも具体的な根拠を述べませんでしたね.こ れではあなたの発言はどう善意に解釈しても,建設的な意見とは云へませんね (流してしまう).みなさんのお手元にある...」 根拠のない批判をされたら,わからないふりをしませう.知らない外国語でも 聞かされたかのやうに.この戦略にもそれなりの根拠があります.つまり, 「新鮮味がない」とはだういふことなのか本当に知っている人などどこにもい ないのです.「退屈」とはそもそもなんなのか,誰にもわかるはずがありませ ん. 敵の言葉に反応するといふことは敵のつまらない批判をすでに受けてしまった ことを意味します.そうならないやうにするのです...相手に対する理解を ストップしてください...なにか云はれてもほとんど理解できない人になっ てしまってください.理解不能者を演じることで敵に目つぶしを喰らはせるの でせう. 毒抜きの問い返し 一度に三匹のハエを打ち落とすことができます. 1 相手は,納得のいく説明をする責任が生じます.あなたは,それによって建 設的な話し合いをするチャンスを与へることになります. 2 問い返すことで あなたに時間的ゆとりが生まれます. 3 あなたは受け身にならなくて済みます.質問して話の主導権を握ってしまう のです. 毒抜きの問い返しをやめたほうがよい場合 2例 誰かが横槍を入れてあなたに突っかかり自分をひけらかさうとする場合と相手 に責任能力がない場合場合. 前者は,そういうやり方で自分の考えを主張したり,人々の注目を集めたがっ ているにすぎない.そういう相手は空回りさせておけばよい. いやみの総決算みたいなことを云はれてつるしあげたのでは,たまったもので はありません...ですから文句や批判はあまり長いこと ためこんではいけ ません.問題が新鮮なうちに,さらっと切り出すのです...きちんと枠を設 けることが大切です...とっさの思いつきとかなにかのついでに批判を切り 出すやうなことは控えませう.ましては第三者がいる場所でなど言語道断です. {9} 一歩ひいて相手のバランスを崩す. もしもあなたがほんとうに敵とぶつかるつもりなら,まず相手に譲歩してください. こうすれば相手はバランスを失う 「ええ,あなたのおっしゃる通りです.これで少しは気がすみましたか」 ...傲慢な口のきき方をされて,むかっと来たときに使うことができます. 譲歩しながらも粘り強くこちらの立場を貫き方法 ほんの一部だけ賛成はするが,それと同時に本質的な部分では一歩も譲らない という出方です...はじめのひとことでは相手の立場を認めてあげます... 「あなたがそう考へるのは私もよくわかります」「ええ,あなたの立場からす ればさういふことになるでせうね」...そうしておいて,ふたこと目で,問 題になっている事柄を断固主張するのです.「それでも,あの天窓の取付けは 間違っているんです」あるいは「それでも,あの天窓は設計図とは違っている のです」...あくまで相手の意見として尊重するだけのことです.決して相 手の主張は正しいと云っているわけではありません. 「すぐに返事をもらいたいとふお気持ちはよくわかります.それでももう一日 考へる時間が必要なのです」 「あなたのお立場でしたら,私もそのやうに云ふでせうね.それでも問題は... なのです」 自信家には「ほめ殺し」で. 傲慢の皮を一皮むくと,そこに埋まっている種はたいてい小さくてひ弱なもの なのです. 傲慢な人間を不愉快だと感じるのは,彼等の優越感に満ちた態度が私達の泣き どころを突くからです.つまり私たちの心のどこかにある劣等感---自分は駄 目な人間じゃないんだらうかとふ不安---が刺激されるからです....本能 的に自意識を守らうと身構へ反抗に出ます....いともたやすく争いの中に 引き入れられてしまうのです. 「そんなふうにいちいち神経質に反応しているやうぢゃ,成功はおぼつかないよ」 「あなたのご高説にはただただ感心するばかりです」 「貴重なアドバイス感謝もうしあげます」 {10} 冷静なひとことで立場は逆転する. 敵の弾が当ったか当らないか決めるのは,あなた自身です. 敵があなたに向って不快な言葉を投げつけてきます.けれどおむこうはあなた がそれに対してどうするかを決める権利も力もないのです.それは丁度,古く て臭いクツがあなたの前に差出されたようなものです.はく,はかないは あ なたの勝手です.それを はくといふことは敵の弾に当った証拠です.けれど も実際は私達を売ち負かすことなんて誰にもできないのです....クツなど 捨てておけばよいのです. なにかを伝へる側は自分自身のなにかをさらけだす,相手に自分を見せるわけ です.これをやめたり,隠したりすることはできません. 相手の攻撃が自分には関係のないものだと思へば,相手の云っていることは, これまでとは違って聞こえるでせう.相手の言葉には注目せずに,相手があな たに対して否応なくさらけ出しているものを見てください. 相手が目下どんな様子かを冷静かつ客観的に云ってあげればよいのす. 「おまえば大馬鹿野郎だ」 「今,怒っていらっしゃいますね」 返し言葉は一種の事実確認です.相手の今の状態を云っただけで話の内容とは 関係ありません. 事実確認といふのはとても簡単です....たとへば診断を下すとふのは事実 確認のひとつです...短かい診断と結論で事足ります. 「本気でそんなことを云っているんぢゃないだらうな」 「私とは別の意見なのですね」または「あなたは別の考へなのですね」 「私の仕事がお気に召さなかったやうです」 「期待外れでしたか」 あなたの意識のチャンネルを切り替へてしまうことです.まず,相手の云って ゐる言葉の内容をすべて聞き流してしまうのです.相手があなたに対してどん な態度をとっているかも,全然気にしないでください.ただ相手になにが起っ ているかにだけ注意をむけるのです. 事実確認といふのは誰の目にも明らかなことを簡潔に指摘するやり方です... 相手を悟らせるとか反省に導くとか,心の傷を癒してあげるとか真理に目覚め させるといふとではないのです...余計な毒を混ぜる必要もありません. 相手の攻撃に対してあなたが毒を投げ返したら,それは既にあなたが相手の差 出したクツをはいて敵から身を守らうとしているなによりの証拠なのです. 怒りが発生したその場所,すなわち相手の懐に怒りをそのまま置き去りにすれ ばよいのです. あなたが相手の言葉に乗っていかなければ,相手はすぐにあなたが「負けない 人」だといふことに気がつきます. 「顔が真赤じゃありませんか.なにかやましいことがあるんですね...」 (挑発) 「あなたは私の顔色のことを考へていたのですね」... 本題にもどしませう...顔色について議論する必要もなければ, 特設リングを設ける必要もなく...無駄なエネルギーを費す愚をおかさずにすみます. 相手が感情論をやめないならば,そのときの方法はひとつだけです.つまり, あくまで事実に立脚し,話の本題をしつこく強硬に主張することです. 相手が無礼な態度に出ても,自分に関係あると思ふ必要はないのです. 相手が無礼で個人攻撃を目的としている場合は,いち早くシャッターを下して しまったほうが得策です. {11} 侮辱をやめさせるには 侮辱することは言葉によるもっとも激しい攻撃... 話し合いにおける大量殺戮兵器 たいていの人は売り言葉に買い言葉で攻撃側の下品なレベルに引きずりこまれ て醜い言葉の泥沼のなかで転げまわるのオチ 要は,相手を同じ次元で接しないこと...そのためにはあなたのパワーを強 くしなければなりません.今の倍以上に. 侮辱されたらどうしますか?越えてはいけない一線を越えてしまったことを相 手にはっきり教えてやるのです.すぐに防御のバリアを築きあげて,きびしい 態度をとります.態度を極端にかえます.声の調子も話すテンポもかえます. ゆっくりと強く訴えるやうに.あなたのパワーと毅然とした態度で相手に分を わきまえさせるのです. あなたのからだ全体からパワーを発散させることが大切です.相手と対決して くさい.相手のいふことをさえぎって,相手の無礼な態度をはっきりと知らせ てやるのです. きびしい調子で「あなた,私を侮辱しましたね」とか「その言い方は人を侮辱 しているわよ」といったやうに. 相手が自分をほんとうに侮辱したのか,もしかするとこちらの考えすぎではな いかといった議論にはいっさい応じる必要はありません.話し合いの段階では ないのです. もうひとことしかるべき要求を加へます.「謝ってもらいたいですね」... その際,相手が本当に謝るかどうかは問題ではありません...ただ謝罪を求 めることで,相手にプレッシャーをかけることができます.相手に不愉快な思 いを味ははせるのです.相手がなにを云はうとかまいません.あなたは同じ要 求を繰り返します. この自己防御戦略でいちばん大事なのはあなたの強さです. ...もちろん逆上してしまってはいけません. 分厚い防御バリアをあなたのまわりに築きあげる. 心の奥底から決意を固めて相手を断罪する. 背筋を伸ばし胸をはって肩幅をひろげる.深呼吸する.息はとめない. 非情な目で相手を睨みつける.目で相手をブタ箱にたたきこむ. 言葉少なに,落ち着いて同じ要求を繰り返す.相手の議論にとりあわない. 卑屈になることなく自分の失敗をはっきりと告白する勇気 間違いをおかしたことはあったにせよ,上司からしかるべき扱いを受ける権利 があることをはっきりと要求. 攻撃側(上司) 「こんなことをやってくれて,しまらねえよなぁ.いったい何を考えてんだ. ええ!そもそもお前に考えなんてあるのか?おまえのそのスズメの脳味噌にま ともにモノを考える場所なんて全然ないんだよな」 インゲさん 「おっしゃる通りです.私はミスをしました.でもいったいだういふことなん ですか,そのスズメの脳味噌ってなんなんですか?」(毒抜きの反問) 「これ以上,バカをいはないでくれよ.いまのバカさ加減だけで十分だよ」 (背筋をピンと張って座りなおし,厳しい調子で) 「その言い方は人を侮辱しています」 「おや,お前に傷つく理由なんかあるのか?最初にクソだらけにしたのお前の ほうなんだぞ.それで汚なくなったから嫌だなんて,そんなこと云へるのか?」 「あなたは私を侮辱しています.謝ってください」 攻撃側は不安になります. 「その生意気な口の聞き方はなんだ.よく云ってくれたじゃないか.お前の尻 拭いをさせられたのはこの俺なんだぞ」 (落ち着いた口調で) 「私はミスをしました.それは認めます.けれどそのためにあなたから侮辱さ れる覚えはありません.今の侮辱的な発言に対して,謝ってください」 攻撃側はいらいらしてきました. 「気でも狂ったのか?お前がミスをおかしたんだぞ.それを俺に謝れといふの か?」 (さらに厳しい口調で) 「あなたは私を侮辱したのです.それに対しては謝っていただきます」 攻撃側は大声で 「お前なんかの指図は受けん!間違いをおかしたことに対して腹を立てて何が 悪いんだ」 (立ちあがり毅然とした声で) 「正当な批判であったら,承ります.けれどもあなたは私を侮辱する権利はあ りません.そんなことをされるいはれはありません」 両者黙る.攻撃側が立ちあがって 「やれやれ,まいったな.よしわかった.俺も確かにカッカしすぎたやうだ. され云いたいことも云ったようだから仕事に戻るか」 上司は面目を保たうと躍起でした.それでなんとなくうやむやに話を終わらせ てしまったのです... 大事なことは...その際に彼女自身が下品な言葉を吐いたり相手を侮辱する ことはなかったのです. 権威に対する恐れは私達を小さくて弱い子供の立場にしばりつけてしまいます. けれども仕事場の現実を冷静に考へれば,そのような恐怖をもつ必要はないの です...私達に指図する管理職の人たちにしても彼等には彼等なりのプレッ シャーがあり,さらにその上の上司に仕えているのす. 労働契約の際に私達は単に労働力を売っただけで,自分の名誉までは売り渡し たわけではありません. 弱い管理職ほど部下を侮辱する傾向が強いようです.ここでいふ「弱い」とふ のは人間関係を円滑にすすめるインテリジェンスに欠けるという意味です. たしかに彼等は専門分野では傑出したスペシャリストかもしれません.けれど も人つきあいや感情の機敏に関してはまったくの素人にすぎません. あなたのまわりにいる人たちは,あなたと接するうちにあなたに対してなにを していいか,どこにあなたの我慢の限界があるかを知るようになります.... ですから相手の侮辱はただちにやめさせること.話し合いなどする必要はあり ません. 疑いやうのないほどはっきりした境界線を引くのです.それはあなたのためな のです.終始一貫その態度をつらぬいてください. ショックの第一段階は錯乱状態です...そんな時,自分を責めてはいけませ ん....どうしていいかわからない場合は,黙っているだけで結構です.無 理にでもなにか云はなければなどと頑張らないでください....その場を立 ち去り,相手から遠ざかることです. すべてが過ぎ去ってからもあなたの思考回路の中では,侮辱を受けた場面が何 度も何度も回っているでせう....魂が救いを見つけださうと藻掻いている のです. ショックから立ち直る ・思考の回転木馬からいち早く降りてしまうこと. ・体験を誰かに話す. ・その時のあなたの気持ちをできるだけ詳しく書きとめる. ・苦しみに身を委ねる.苦しみにどっぷり漬かる. ・運動する. ・これらの方針についてよく考える.再び侮辱されないためには根本的になに を変えなければいけないのでせうか? 復讐は埋め合せを求める魂の叫びです... しかし..復讐だけはやめてください.あなた自身を損うだけです. 復讐するといふことはあなたのパワーを相手にしばりつけるということです.... 相手の人間はなたがエネルギーを注ぎこむいはば最後の人間ということになっ てしまうではありませんか.そんな怒りはあなた自身のためにとっておいたほ うがよくありませんか?あなたの怒りを屈辱的な状況からの解放のエネルギー にするのです. {12} 歯に衣着せず言い返す. ただ,歯に衣着せず言い返せばよいのです.すぐに話の土俵を変えてしまうの です.相手と同じ次元でしゃべらずに,ありのままをはっきり云ってやればよ いのです.相手の態度をそのまま解説してあげるのです. 相手の攻撃には直接答えずに,相手の態度そのものを批判してやるのです.た とへばこんな風に.「それは私に対する個人攻撃ではありませんか」とか「あ なたが今おっしゃたことは事実に反しています」 相手が少し厭味な,どこかつっけんどんな話し方をしてくることがあります. この場合にはたいてい相手側にたしかな議論の拠所がないのです....もし も,あなたがこんな挑発にまともに乗って,相手にものすごい反論を投げつけ てしまったら万事窮すです....あなたを刺激しておきながら,あなたに罪 の全てをなすりつけてくるでせう....相手のペースにはまりこんではいけ ません.敵の態度そのものを話題にしてやるのです.たとへばこんな風に. 「まぁ冷静になって,本題に戻りませう.いったい私の提案のなにが気にいら ないのですか」 それでも...態度を改めず,いつまでも本題から話をそらさうとする時は... そもそも相手にあなたと交渉する意志があるのかないのかをよく考へてみてく ださい....単刀直入に尋ねたらよいのです.話し合いをする気があるのか ないのかを.もしあるのなら話の流れを一気にあなたのほうに引き寄せてしま いませう.手短に基本方針を説明します.たとえばこんな風に. 「なんらかの結論に達することが大事なのではありませんか?それなのにあな たは再三再度,私を個人攻撃していますね.これでは話が進みません.本題に ついて冷静に話しあってください」 全力を込めて話します.言葉そのものよりも,あなたの断固とした気迫はもの を云ひます. 腹黒い権謀術数は,それが明るみに引き出され,はっきりと名指しされた途端, しゃぼん玉のやうに消えてしまうものです. なにがあなたを傷つけたのか,なにかあなたを怒らせているのか短かく正確に 伝える. 相手の態度が卑劣なときは話の流れを断ち切って相手の態度をはっきりと指摘 すること. 相手に対して,より快適な話し合いのルールを提案する. 毒を含んだ言葉を投げるのは人間関係がどこかうまくいっていない間接的なあ らわれです...本当は,面とむかって云ふ時期が来ているのです.ところが はっきり云ふにはかなりの勇気がいります.もうずっと前からぐつぐつ煮えた ぎっているものに立ち向ふのだから大変です.それにどんな結果になるのか誰 にもわかりません....そのために,はじめのうちは何があっても闇に葬っ てしまいます. ものごとを明らかにする段になると...子供のころにさんざん聞かされたお 説教を思い浮べます....誰かからどやしつけられて罰を受けまいかという 想像です.まるで裁判のように判決が下されるという嫌な思いです.けれども ものごとを明らかにするというのは裁判とはほど遠いのです...ここでは問 題を明らかにするだけです.なにも一気に問題を解決して,平和をとりもどせ といっているわけではありません...問題を明らかにするといふのは今まで 闇に葬られてきたものを明るみに出すことなのです.そうのようにしてやうや く問題の根が見えてくるのです. いくつかのヒント ・相手と話をつける前にまず,あなた自身と話をつけてください. あなたになにが起ったのですか?なにがあなたを怒らせ,不愉快にし,傷つけ たのですか?あなたはどのようにして自分の意志をつらぬき,あなたの名誉を 守ってきたのですか?あなたをうんざりさせているのはなんですか?それを相 手に云ってやることができますか?相手にどうしてもらいたいですか?どう立 ち向いますか?これからだうしたいですか? ・よい場所と時間を選びなさい. 場合によっては中立な立場の人に立ちあってもらっても結構です. ・具体的に 一般化すると相手を攻撃しているやうに響きます.「いつも」「かならず」 「決して」という言い方は避けてください...できるだけ正確に具体的に云 いあらわしてください. ・武器を使うな(相手を攻撃するな) ・死刑宣告するな.相手に罪を着せたり断罪しては駄目 どちらに罪があるかなんて争うだけ時間の無駄です. 誰でも自分の都合のよいようにしか考えません. ・フェアに話しあうこと ・言葉の量より中身 しゃべりすぎると内容がボケてしまいます.正しいことをきちんと話すことで す.ふたことみことで十分です. ・無理に解決しやうとするな. しっくりこないのものを何が何でもまとめあげやうとしないこと.あなたと相 手がどの点で一致妥協できないのか,それがわかるだけでも大きな収穫です. 結局のところ,あれやこれやの違いを抱えながら,相手とどうやって共存,協 力していくのかという問題なのですから. どんなつまらない一言でも相手はそれによってあなたになにかを伝えやうとし ているのです...暗示めいた言い方を避け,相手にはっきりと自分のメッセー ジを伝えることはとても大事なことです. 相手との人間関係を大事にしたい場合はすぐにうやむやな言葉の土俵を去って 相手に直接はっきり伝えることが肝心です...「さぁみなさん,お互いに仲 良くやりませう」などとかけ声をかけたところで効果はありません. {終章} 攻撃する側とされる側は互いに奇妙なダンスを踊っているようなものです.こ のダンスを,あなたはいつでも変えることができます. 大事なことは相手の期待どおりに反応しないことです.特に,「相手が失礼な 態度をとったのだから,ただじゃおかないわ」といった,ありきたりの復讐気 分にひきづられるのは最悪です....たとえば「相手が私に対して失礼な態 度をとったわ.これは何か新しいことを試してみる絶好のチャンスなんだわ」 と 好奇心をもつことがあなたの精神衛生上ベストなのです.奇妙な人間を相手に する新鮮さを発見してください.世界はあなたが実験するためにあるのです. 相手から攻撃された黙ったままのあなた,負けたんぢゃありません.それがあ なたとあなたの神経にとってベストな撰択だったのです. どう反応するかはあなたの気のすむやうに自由に決めればいいのです...唯 一大切なことは,あなたが冷静でいること,なにが起らうと平然としているこ とです...その気になれば実際にどんな状況でもつくり出せることを思い出 してもらえればそれでいいのです. なにかをやりとげるとか,実力を証明してみせる必要などまったくないのです. あなたに特別な勇気があったからといって,誰かがあなたに勲章をくれるわけ でもありません.あなたにとってしっくりくる,あなたの気持ちにあっている, そんな方法を実行してみてください. いつも当意即妙に反応できるかどうかといふことよりも,たとへできなくても 自分自身を責めないことのほうが大切なのです.自分の不完全さ,あるいは不 完全な自分とお友達になることのほうがずっと重要なのです.さうすれば他人 もまた,同じやうに不完全な存在なんだなといふことがしみじみわかってくる と思うのです. #3#################################################################### グサリとくる一言をはね返す心の護身術 ベルクハン,バルバラ著 瀬野文教訳 草思社 2002(Deutsche 2000) ISBN:4794211325 So Bin Ich Unverwundbar Barbara Berckhan K\"osel-Verlag GmbH & Co., M\"unchen ###################################################################### 横柄さの裏にはたいてい劣等感が潜んでいる. 相手に理解を示しても相手のいいなりになる必要はない. 情に流される時,人はなんらかの責任を感じてそうなってしまう.しかし,そ んな責任など嘘っぱちでしかない. 人は他人の中に自分の嫌なところを見ている. 他人の感情に対して「それは私には関係ない」とはっきり云ふことも大事です. 非人情になるのはドアを閉めるのと同じくらい簡単なことだ. 泣きたいのなら泣かせてあげなさい.だからと云って計画を変える必要はありません. 人は起源よく過ごす権利がある.話が不愉快な方向にそれたら,すぐに中断し てしまいませう.はじめにしやうと思っていたことを思い出せばよいのです. 空いて から操作されたり圧力をかけられたら一言,こう云って退けませう. 「それについてはよく考へておきませう」とこれだけで十分です. 要求が受け入れられない時は頑固な態度に切り換えて下さい.そして針の飛ん だレコードのように同じことを何度でも繰り返せばよいのです. 先を急ぐ必要はありません.話すのをやめて休憩したいと云へばよいのです. 一人で落ち着いて考へてください. 相手の圧迫があまり強かったり無理に云いくるめられそうになったり,あるい は相手の攻撃があまりにきつかったりする時は,ただちに会話を打ち切って, 考える時間を要求しませう.しばらく間をとって,どう答へたらいいかじっく り考へませう.黙ったまま相手を待たせておいても,いっこうに構いません. 腹を立てるといふのはハンマーで自分の指を叩くくらいバカげています. 理性といふものはいとも簡単になくなってしまうものだ.しかも本人はたいて い,そのことには気がつかない. 腹を立てて興奮すると追いつめられて他に選択の余地がないような気持ちにな ります.ために人は過剰な反応をしてしまうのです. 怒らないためには何があってもそれで人格が傷つけられたなどとは思はないこ とです. 憶測をする前に正確な情報を集めませう. 「それが私を怒られた」とふ云ひ方は正しくありません.正確には「事実はあ るがままだけど,私が自ら怒ろうと決心した」と云ふべきです. 人やものごとを悪いと決めつけなけれ自然と冷静になれるのです. 怒りの度合がはげしければはげしい程,それだけはげしく身体を動かして悪魔 を追い払う必要があります. すんだ嫌なことを考へてくよくよしたり,怒り出したりするよりは,好きなこ とや思い出し笑いできることに関心を向けませう. あなたを興奮させているのは極些細なことにすぎないのです. 人といふものは今自分の人生で何が一番大事かを考へた時に不思議と心が落着 くものです. あなたのまわりに変化がおこったら,それはあなたと改善するチャンスです. 待っているのではなく,自分の希望や目的を実行に移しませう. 心配の背後に不安が顔を覗かせたら,逃げないことです.不安の顔を正面から 見据えてやりませう.そして自分に問いかけるのです.なにが一番怖いのか最 悪なのか,そうなる可能性はどれくらいか,どれくらい自分の人生に影響を与 へるのか,未然に防ぐか影響を低減するためには今の自分になにができるのか, と. 心配でたまらない時には一定時間の心配タイムを設ける.心配ごとを書き出す. 積極的に行動するか,さもなくば放り出すこと. ただ行動によってのみ不愉快な圧迫に終止符を打つことができるのです. 誰かが攻撃的な批判を浴びせてきても,一歩退いて冷静に,どこがどれだけあっ ているか,あっていないか考へませう.いづれにしても,相手がだう思はうと それは相手の問題ある,相手が不機嫌なのも自分で勝手にさうしているだけで す.それに取り合う必要はありません. 不機嫌を人にぶちまける,頭ごなしに目下のものを叱りつける,ぼろくそにこ きおろすことは批判とは程遠い,ただの下品で卑怯な行為でしかない. 本当の批判とは批判させるものに貴重な贈り物をすることです.よい批判とい ふのは相手に新たな道を示してあげることです.有益な批判とは,いつも必ず 相手の人格に対する絶対的な敬意と結びついています. よい批判かどうかの見極めは人格に敬意を払っているか,言葉づかいにまごこ ろが籠っているか,話の内容が明快で事実が正確に伝はってくるか,非難な蔑 み(さげすみ)の口調になっていないかで用意に識別できます. 「なにが気になるのですか?詳しく説明してください」「どうすればもっとよ くなれるのですか」「どうしてそれを問題にするのですか」という質問に対し てまじめに答へるかどうかで,よい批判かどうかを見極めることができます. たとへ,しっくりこない批判であえも,「ありがたう.参考になります」とあっ さり答へておきませう. 批判される側にも,いつ,どこで批判されるかを決める権利があります.そも そも批判されることを望んでいるかどうかも批判される側が決定することです. よけいな批判に対して「とても興味深い意見ですね.でも私は自分で判断しま す」 決定権を握るのはあくまで自分なのだといふことを相手にはっきりわか らせませう. 境界線を引くにはまず,あなた自身の立場をはっきりさせておかなくてはなり ません.その事柄が相手をまったく関係ないことを確かめて,それから断固た る態度で境界線を引くのです.その時,決して興奮しないこと. 自分がどう生きるかは,あなた自身が決めることであり,あなたが下した決定 の結果を担うのも,あなた自身なのです. 他人がとやかく云ふのをさまたげることはできません.誰だって思っているこ とを口に出す権利はあります...相手を意見をさらりと脇にどけるだけで充 分です.「あなたはそう思うのね.わかった」 不安でも自信をもって悠悠とした態度で相手に助言を求めませう.けれどもあ なたの人生はあなたのもので,相手に面倒を見てもらうつもりは微塵もないこ とをはっきり相手にわからせませう. 失敗しても悪びれない態度が必要です.失敗したくらいでビクビクして傷つて いるようでは気骨のある人間にはなれません. よく間違へるからと云って人間としての価値を傷つけるものではありません. 人の積みあげた計画やアイディアを,ただの一撃でひっくり返そうとする人が います.これは幼児が積木くずしをするのと同じで,その人のレベルも同じで オムツがとれないか,なんでも否定的に見るだけで何一つ建設的な提案ができ ない大人のどちらかです.「積木くずし」は自分で積木を積みあげることはで きません.「それじゃ,あなただったらどうするの?」と問い返しても具体的 な返答はない,ごまかすか,余計に壊しにかかるのかのどちらかです.その場 合は「ああ,そうですか」の一言で片付けてしまいませう. 批判の名人になるのは人生をあきらめた人です. 陰謀や足のひっぱりあいの場で,いくら相手を攻撃してさざんに打ちのめした ところで実際に勝利を得る者など一人もいませんし,気分が晴々することなど も決してありません.そういう場にいる人にはバカバカしい争いをやめやうと する人間としての強い意志が根本的に欠けています. 対等のコミュニケーションが成り立つためには相手に対する善意が基本として なければなりません. ものごとを上から超然と眺めるようにすれば他人のどたばたに巻き込まれずに すみます. 失礼な言い方をされたら,それには応じないことを相手に伝えませう.失礼な 態度に応じる必要はないのです.話をやめて,今あなたに対してなされた不愉 快な言動を話題にしていまいませう.本題からわざと外れるのです.間を置い て一気にぶちまけてしまわずに,なにくわぬ冷淡な少し いかめしい表情をつ くります.そして相手が行き過ぎだったことを短い言葉で伝へます.「そんな 云い方は傷つくわ.あなたにそんな云い方をされたくないわ」とか「その云い 方は受け容れられない.違う考へだからといって侮辱されることはないわ」相 手の目をしっかり見て云ひ,終ったらしばらく沈黙すること,相手が屁理屈を ならべて言い訳しても放っておきませう.相手はただ自分の面子を守ろうとし ているだけです.ただ,あなたに対する態度を改めるよう要求を繰り返せばよ いのです. 許して忘れてやる度量をもつことも重要です.将来に向って身を軽くして旅立 ちませう. 嫌な人間関係から逃れられないのは意志の弱さです.思いきって机をひっくり 返す勇気をもつことです.あたなの頑固一徹さ,意志の強さが試されていると ころです.はっきりとあなたの決意を表明するのです.簡単でわかりやすい意 志表明のひとことで充分です.ことあるごとに何度でも繰り返し云ってくださ い.あれこれ文句を云ったり不平不満を並べたりせずに,ただ一言「ノー」と 云へばいいのです.「私は○○だ」という云ひ方をすることです.自信と確信 にあふれていることが大事です.云ったことは必ず実行し,何度でも「ノー」 を繰り返すことです.点滴が石を穿つことを知ることが大切です. 嫌な場所というのは自分の場所を教へてくれるためにある.つまりここは自分 のいるべき場所なのだろうかといふことを考へさせてくれる場所なのです. つまらない人間関係と思い切って縁を切りませう.自分の魂のすばらしい部分 を守らなければならないことが人生には時々あります.それはたやすいことで はありません.代償を払い,不愉快なことを引き受けなければいけないかもし れません.それでも不名誉は人間関係に居続けるよりは未来の見通しとしては ずっと明るくなえす.とどのつまりはあなた自身にはっきりとした見通しが立 つかどうかです. 厭味な言葉を浴せられたからといって,あなたが不愉快にならなければいいけ ない理由などどこにもないことを知れ.あなたを攻撃した相手こそ,問題を抱 えているのです.そんなものをあなたが引き受ける理由などありはしない.相 手は単にあなたを挑発したいだけなのです. 失礼なひとこに対応するには (1) 無視する.聞き流す. (2) 攻撃側に達成感を味ははせない.怒ったり傷ついたりすることで相手は達 成した気いなる.なにごともなかったように平静を装へばいい.わざと理解で きないフリをしませう.逆に相手にそれはだういふ意味かを聞き返してやるの です.攻撃者の試みをキャンセルするのは簡単で相手の厭味に理解を示すのを やめてしまへばいいす.理解するのは知性を駆使する頭脳労働です.そんなこ とをバカモノ相手に使う必要はありません. (3) 相手に読めない人間になれ.予想のつかない反応をしてみやう.お礼をいっ て相手の発言をノートに書きとめておくとか,相手にとってだうでもよいこと を散々ぶちまけてやるとか,頭がおかしいと思はせれば成功です.楽しまうと いふ気があれば,ビックリさせのはわけないのです.人を攻撃するといふこと 自体がふざけたことなのですから,あなたもふざけた対応をして一向に構はな いのです. (4) 相手の悪口をよろんで受け容れる.「わがままだ」「よく気がつきました ね.私はそのわがままになりたくて努力してきたのです」相手が投げつけた臭 いクツをあなたが履かなければいけない必然性はありません.あなたは気高い 存在なのです.相手の不愉快なひとことがかえって待ち遠しくなります. 頭にくる一言は唐突に襲ってくるものです.びっくりして言葉が出ないもので す.反射的に反応しやうと焦ってはいけません.これはあなたが楽しむトレー ニングなのです.しばらく静止して,それからゆっくりとだらだら反応すれば いいのです.即答しなければならないなんてバカな法は一つもないのです.そ れまで待たしておけばいいのです.なんなら一時間後にまた來てくれと云ひま せう. 積り積った争いの種をたった一度の話し合いで解明することなど,とてもでき ません.争いは人生の破綻ではなく,生きていればどこでも起こることです. 人生で出逢う人といふのは,どんな人でも天があなたに与へてくれた貴重な贈 りものなのです. カブトムシを捕まえるハチミツが必要です.辛いカラシには來ません.同じや うに人の心をつかむには長所をほめてやることです.欠点を批判して腹を立て たところで何にもなりません. ゴミ箱の中身をほじくりかえしたいのですか.それとも宝の箱をあけてみたい のですか?といふことです.あなたが宝の箱をあけているのに,相手がゴミ箱 から出てこないからといってガッカリしないように.大事なのは少しでも目先 を変えることができたといふこと,あなた自身にも変化が生まれ,ちょっと幸 せな気分になったことです. 最後にいいたいことは,星を拾い集めやうということです.つまり人生を豊か なものにすることです.星は目標に似ていますが違います.目標と星の違いは 心のもちようにあります.星というのはvisionのようなものです.それを思う を目がキラキラを輝くことです. 傷つかないためには夢中になって自分の星を追いかけるのが一番です. 心に星をもつ人はそれをかなえる力を必ずもっています. 「私は輝く星にむかって進んでいるのだ」とふことを思い出してください.星 を心に抱いている幸福感を忘れないように. 「犬が吠えても隊商は進んでいく」犬など置き去りにしてしまいませう.