維管束系の進化 -- 成長輪: シダ種子類の出現以前と以後

陸上植物は, コケ類, マツバラン類, ヒカゲノカズラ類, トクサ類, シダ類, シ ダ種子類, 裸子植物類, 被子植物類の順番で進化してきたと考えられている. 陸上植物で木本になるものは,ヒカゲノカズラ類(鱗木/リンボク, 封印木),トク サ類(蘆木/ロボク,つくし), シダ種子類, 裸子植物類, 被子植物類である. この うち,成長輪(年輪; ただし年単位で形成しているとは限らないので,こう呼ぶ)が 見られるものは, シダ種子類,蘇鉄類,裸子植物類,被子植物類である.

最初の木本植物からシダ種子類まで

シダ種子類以前の陸上植物で木生になる植物には, ヒカゲノカズラ類(鱗木/リン ボク, 封印木),トクサ類(蘆木/ロボク,つくし)があるが, これらは成長輪をもた ない. 成長輪の進化史上の位置付けを理解するために,シダ種子類までの化石植 物の特徴を概説する.

ヒカゲノカズラ類--樹皮のコルク層のみで幹や枝葉を支える植物.

ヒカゲノカズラ類は,石炭紀には大森林を形成していた(リンボク,封印木など) . 肥大した皮層と貧弱な木部で特徴づけられる. 二次維管束を形成せず,貧弱な 維管束組織しかもっていない. このため成長に伴なって,自重によってしばしば 倒壊したと考えられている. この類はデボン紀の終わりに出現し石炭紀末で衰 退するが, その原因として,強固な木部をもった植物が出現し, 日照をめぐる競 争に破れたためと考えられる.

トクサ類--幹は中空で, そのまわりを強い材の組織で補強した植物.

トクサ類も石炭紀に大森林を形成した種類である(ロボク). 一次維管束系は管状 中心柱で, 髄が大きな空洞になっていることが特徴である. 中空の髄のまわりを 二次維管束系が支持しており, リンボク類よりは機械的強度は強く, リンボク類 が衰退した石炭紀末でも絶滅しないが, より強固な二次維管束をもつ植物群(シ ダ種子類, 裸子植物)の出現に伴い,三畳紀には衰退した.

シダ種子類--強い幹と明瞭な成長輪をしめす最初の植物.

明瞭な成長輪を形成する最初の植物はシダ種子類である. 一次維管束環系が真正 中心柱であり, 幹でも髄が発達している(裸子植物の幹には髄はほとんどない) . シダ種子類は石炭紀に出現し,ペルム紀まで生育していた. このシダ種子類の うち,明瞭な成長輪を示す化石植物はグロソプテリス(Glossopteris: 「大きな羽」の意)目である.グロソプテリスはペルム紀に南半球にあったゴンド ワナ大陸(南米,アフリカ,インド,南極がひとつにくっついていた)に特徴的に分 布している. シダ種子類は成長輪をもち種子を作る最初の植物であることから, 植物進化史上の意味は大きい. シダ種子類と裸子植物の関係は議論がわかれてお り, 裸子植物の先祖であるという意見と,直接の先祖ではなく傍系であるという 意見とにわかれている.

シダ種子類より後の木生植物

蘇鉄類

蘇鉄類は真正中心柱の一次維管束をもち,植物進化史上,シダ種子類と似た位置付 けをされている. 蘇鉄類は三畳紀に出現し,ジュラ紀には世界的に生育していた が, 白亜紀になると衰退した. 蘇鉄類は二次維管束も発達し, 成長輪が見られる 属も存在しているが, 基本的に二次維管束は薄く,多数の放射状柔組織が木部を 横切っている.

裸子植物

裸子植物の針葉樹類と銀杏類(イチョウ類)は,どちらも石炭紀には出現していた が, 世界中で生育するようになるのはジュラ紀である. どちらも真正中心柱で, 明瞭な成長輪がある二次維管束系が発達している. 材化石の肉眼観察では両者を 区別することは難しい. 裸子植物は道管を欠き, 被子植物に比して均質な木部 をなす. 裸子植物も被子植物も,材の髄は非常に小さい.

地質相談でのBrazil産植物化石鑑定時の覚え書き


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